今年の阪神芝2400mで、後の重賞馬たちに並ぶ驚異的な数字を残した一頭がいます。
その名は――ブラックオリンピア。
今週日曜日、阪神9レースで行われる兵庫特別。
東では秋のスプリント王決定戦・スプリンターズステークスが開催されますが、その裏で個人的に非常に注目している3歳馬が出走します。
派手な重賞実績があるわけではありません。
しかし、今年春に同じ阪神芝2400mで記録した数字を振り返ってみると、今後さらに上のクラスへ進んでも面白いのではないか――。
そう思わせるだけのパフォーマンスを、すでに見せています。
今回はブラックオリンピアが今年4月に見せた走りと、そのラップ、そして個人的にも非常に興味深い血統について見ていきます。
阪神2400mで見せた2馬身差の完勝

注目したのは、今年4月に行われたアザレア賞です。
舞台は今回の兵庫特別と同じ阪神芝2400m。
しかも当日は稍重。
良馬場の高速決着とは異なり、ある程度のパワーとスタミナも要求されるコンディションでした。
ブラックオリンピアは道中3番手付近を追走。
2400mという長丁場だけに、序盤から無理に動くことなく、前を射程圏に入れながらレースを進めます。
そして迎えた直線。
ブラックオリンピアは追い出されると力強く抜け出し、後続との差を広げます。
最後は2着に2馬身差。
同じ3歳馬を相手に、しっかりと力の違いを示す内容で勝利しました。
ただ、個人的に注目したいのは「2馬身差で勝った」という結果だけではありません。
より興味深かったのが――
レース全体のラップです。
前半63秒0から、後半58秒1

このアザレア賞。
前半1000mは――
63秒0。
2400m戦らしく、序盤は比較的ゆったりとした流れでした。
ところが、ここからレースの質が一気に変わります。
後半1000mは――
58秒1。
その内訳が、
12秒0-11秒7-11秒4-11秒1-11秒9。
非常に優秀な数字です。
特に興味深いのは、単純に最後の1ハロンだけが速いレースではないこと。
12秒0から11秒7、さらに11秒4、そして11秒1。
ゴールへ近づくにつれて段階的にペースが上がっていき、ラスト1ハロンも11秒9。
長い距離を走った後にもかかわらず、大きく失速していません。
一瞬だけ爆発的な脚を使うというより、長く加速を続けながら最後までスピードを維持する。
2400mという舞台を考えれば、非常に魅力的なラップだったと思います。
では、この「前半1000m63秒0、後半1000m58秒1」という数字。
阪神芝2400mでは、どれほど珍しいものなのでしょうか。
過去10年で該当した馬を見ると……
そこで過去10年の阪神芝2400mを対象に、
前半5F=63秒0以内
そして、
後半5F=58秒1以内
という条件で調べてみました。
すると、この条件を満たした馬の中には、後に重賞戦線で活躍した馬たちが並びます。
まず――
サトノグランツ。
後に京都新聞杯を制し、さらに神戸新聞杯も勝利。
3歳世代の中長距離路線で重賞2勝を挙げた実力馬です。
続いて――
エリキング。
こちらも後に神戸新聞杯を制した重賞馬。
さらに――
サンセットクラウド。
オープンクラスまで勝ち上がった実力馬です。
そして、その中に今回取り上げる――
ブラックオリンピア。
もちろん、同じ条件を満たしたからといって、その後の成績まで同じになるわけではありません。
競馬は馬場状態、展開、相手関係など様々な要素によって時計が変化します。
それでも、阪神芝2400mという同じ舞台に限定した時、後に重賞を勝つような馬たちと同じ領域の数字を3歳春の段階で記録していたという事実は、非常に興味深いものがあります。
少なくともアザレア賞の走りは、単なる条件戦勝利として片付けるには惜しい内容だったと感じます。
前走2着も評価を下げる必要はない
その後、ブラックオリンピアは新潟芝2200mで行われた阿賀野川特別に出走。
結果は2着でした。
勝ち切ることはできませんでしたが、この一戦についても個人的には悲観する必要はないと考えています。
なぜなら――
勝ったロードフィレールが記録した勝ち時計は、
2分9秒3。
従来のコースレコードを大幅に更新する驚異的な時計でした。
つまりブラックオリンピアが敗れた相手は、非常に高いパフォーマンスを見せていたことになります。
しかもブラックオリンピア自身も、その勝ち馬から――
わずか0秒3差。
レコード決着となった高速戦の中で、大きく離されたわけではありません。
勝敗だけを見れば「2着」。
しかしレース内容まで含めて考えれば、能力を否定するような敗戦ではなかったと思います。
そして今回。
再びブラックオリンピアが戻ってくるのが――
阪神芝2400m。
あのアザレア賞で非常に優秀な数字を残した舞台です。
個人的に惹かれる「豪州」の血

そしてブラックオリンピアについて、もう一つ個人的に非常に興味を惹かれるポイントがあります。
それが――
血統です。
父は、日本を代表する名馬――
キタサンブラック。
現役時代には菊花賞、天皇賞・春、天皇賞・秋、有馬記念などを制覇。
中長距離を中心に圧倒的な実績を残しました。
そしてブラックオリンピアの母系に目を向けると、そこには日本競馬とは少し違った血が並んでいます。
母父は――
Pierro(ピエロ)。
さらに遡っていくと、
Lonhro(ロンロ)。
Octagonal(オクタゴナル)。
そして――
Zabeel(ザビール)。
オーストラリア、ニュージーランド競馬を知っている人であれば、思わず目を止めたくなるような名前が並びます。
私自身、かつてオーストラリアの競馬業界にいました。
そのため、この名前が並ぶ血統表を見ると、どうしても少し特別なものを感じてしまいます。
日本ではディープインパクト、サンデーサイレンス、キングカメハメハといった名前が血統表の中で大きな存在感を持っています。
一方、オセアニアの競馬を見てきた人間にとって、ZabeelやOctagonal、Lonhroといった名前もまた、非常に馴染み深い存在です。
Zabeel「5×3」という血統構成
さらにブラックオリンピアは――
Zabeelの5×3。
豪州・ニュージーランド競馬を代表する名血を、血統表の中に複数持っています。
Zabeelは自身も競走馬としてGⅠを制し、種牡馬としてもオセアニア競馬に極めて大きな影響を残しました。
特に中長距離路線との結びつきが強く、スタミナや持続力を伝えてきた名種牡馬として知られています。
さらにブラックオリンピアの場合、母、そして祖母もオーストラリアのオークスを制したGⅠ馬。
母系には、オセアニアの中長距離カテゴリーで結果を残してきた背景があります。
そこに日本の――
キタサンブラック。
日本競馬の中長距離で圧倒的な実績を残した父と、オーストラリアを中心とする中長距離血統。
非常に面白い組み合わせです。
もちろん血統だけで競走能力のすべてを説明することはできません。
しかし、阪神芝2400mのアザレア賞で見せた、
「長く加速を続け、最後まで大きく失速しない」
という走りを見ると、この血統背景と結びつけて考えたくなる部分があります。
一瞬の切れ味だけではなく、長い距離でスピードを持続する能力。
それこそが今後、ブラックオリンピアの大きな武器になる可能性があります。
再び阪神2400mへ
そして今週。
ブラックオリンピアが挑む兵庫特別の舞台は――
阪神芝2400m。
アザレア賞と同じ舞台です。
そこでブラックオリンピアは、
前半1000m63秒0。
後半1000m58秒1。
後半5ハロンを、
12秒0-11秒7-11秒4-11秒1-11秒9。
という優秀なラップで走り切りました。
そして過去10年、同じ阪神芝2400mで「前半5F63秒0以内+後半5F58秒1以内」という条件を満たした馬の中には、サトノグランツやエリキングといった後の重賞馬が存在します。
ブラックオリンピア自身は、まだ重賞を勝った馬ではありません。
まだ条件クラスを戦っている一頭です。
だからこそ――
今回の兵庫特別は非常に楽しみです。
あのアザレア賞で見せた数字が、将来性を示すものだったのか。
それとも一つのレースだけで生まれた数字だったのか。
再び同じ阪神2400mを走る今回、その答えの一端が見えてくるかもしれません。
個人的には、今後さらに長い距離でも見てみたい一頭です。
父キタサンブラック。
母系にはPierro、Lonhro、Octagonal、Zabeel。
そしてオーストラリアのオークスを制したGⅠ馬たちが並ぶ血統。
日本とオーストラリア。
二つの中長距離血統を受け継いだブラックオリンピアが、得意舞台でどんな走りを見せるのか。
重賞馬たちに並ぶ数字を残した阪神芝2400mで――
ブラックオリンピアは、再びその能力を証明できるのか。
今週の兵庫特別。
その走りに注目です。

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