2月を迎えた今週の中央競馬。
日曜日には2つの重賞が組まれ、マイル路線とクラシック路線の今後を占う重要なレースが行われる。
各陣営が思惑を持って臨む、いわば表舞台の一日だ。
しかし、その前日の土曜日に目を向けるとどうだろう。
重賞は一つも行われない。
番組表だけを見れば、どこか静かで、穏やかな開催に映るかもしれない。
だが、競馬の歴史を振り返れば分かる。
本物の大物は、必ずしもスポットライトの下から現れるわけではない。
むしろ、誰もが見過ごしがちなレース、静かな開催日にこそ、後に時代を変える馬がひっそりと出走していることが多い。
今週の土曜日も、まさにそんな一日だ。
重賞こそ行われないが、そこには将来を嘱望される2頭の“怪物候補”がスタンバイしている。
京都10R エルフィンステークス

母も兄も重賞Vの良血アドマイヤシュラが快勝 Cデムーロ「すごく上手な競馬」【2歳新馬・京都5R】 | 競馬ニュース・特集なら東スポ競馬
牝馬の枠を超えた破格の存在──アドマイヤシュラ
まず注目したいのは、京都10レース・エルフィンステークスに出走するアドマイヤシュラである。
彼女に衝撃を受けたのは、前走の新馬戦だった。
舞台は昨年11月の京都芝1800メートル。
スタートを決めると、先行馬を視界に入れながら内目の好位を追走。
道中は折り合いに専念し、直線でも無駄に外へ持ち出すことなくインコースを選択した。
直線では前が一瞬詰まる場面もあったが、そこからが真骨頂だった。
狭いスペースを割るように進出し、内のホウオウモチーヴ、外のフレッチャアズーラをきっちりと交わして1着。
決して派手な大外一気ではない。
だが、内容は極めて濃い。
特筆すべきは、ラスト2ハロンの加速力だ。
11秒2-11秒3。
新馬戦としてはもちろん、2歳戦全体で見てもトップクラスの数字である。
勝ち時計も1分47秒2と優秀で、京都1800メートルという舞台設定を考えれば、なおさら価値は高い。
過去10年を振り返り、
「2歳・芝1800メートルで勝ち時計1分47秒2以内、かつラスト2ハロン22秒5以内」
という条件を満たした馬を挙げてみると、その顔ぶれは圧巻だ。
ほとんどが後にGIタイトルを手にした名馬ばかり。
そのリストに、牝馬であるアドマイヤシュラが名を連ねたという事実は、軽視できない。
エルフィンステークスは、桜花賞やオークスへと向かう上での重要なステップレース。
ここで問われるのは、純粋なスピードだけでなく、経験値、立ち回り、そしてメンタル面の強さだ。
果たして彼女の能力は、経験馬が揃うこの舞台でも通用するのか。
答えが出るのは、ほんの数分後である。
東京メイン 早春ステークス
距離延長で覚醒した素材──トリプルコーク

そして、もう1頭。
東京のメインレース、早春ステークスに出走するトリプルコークだ。
通算成績は5戦3勝。
そのすべてのレースで単勝1倍台に支持されてきたように、デビュー当初から陣営の期待は大きかった。
だが、その期待が「確信」に変わりつつあるのが、ここ最近の内容である。
前走の本栖湖特別。
レースは大逃げを打つ馬がいて、ペースは決して単純ではなかった。
そんな中、トリプルコークは慌てることなく中団で脚を溜める。
直線に向くと、先行勢との追い比べになったが、そこからの伸びが違った。
一完歩ごとに差を詰め、最後は余力を残して差し切り。
連勝という結果以上に、「力の違い」をはっきりと示した一戦だった。
時計も優秀だ。
勝ち時計は2分24秒8。
そして注目すべきは、最後の5ハロン57秒9というラップ構成。
2400メートル戦でこの数字を記録すること自体が簡単ではない。
過去10年、3歳の2400メートル戦で同水準のラップを刻んだ馬を並べると、
そこにはクラシック戦線を賑わせた名馬たちの名前が並ぶ。
距離延長によって、トリプルコークの持つポテンシャルが一気に解放された印象すらある。
スタミナ、持続力、そして直線での加速力。
そのすべてが噛み合い始めた今、ここは通過点であっても不思議ではない。
静かな開催の裏に、未来は隠れている
重賞のない土曜日。
一見すれば、地味で目立たない開催かもしれない。
しかし、競馬というスポーツは残酷で、そして正直だ。
本当に強い馬は、舞台の大小を問わず、必ずその能力を示す。
後にGIを制する馬も、最初から注目されていたとは限らない。
静かな条件戦、重賞ではないリステッド競走、そんな場所から一気に飛躍していった例は数え切れないほどある。
今週の土曜日に出走するアドマイヤシュラとトリプルコーク。
この2頭もまた、その系譜に連なる存在かもしれない。
重賞ではないからこそ、純粋に“馬の力”が問われる。
そんな舞台で見せる走りは、きっと未来への大きなヒントになるはずだ。
静かな開催の裏側で、歴史は動き出す。
この2頭の怪物候補に、ぜひ注目してほしい。

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