── 日曜競馬、静かに始まる“本物”の物語
今週の日曜日、競馬ファンの視線は二つの重賞に集まる。
東京では根岸ステークス、京都ではシルクロードステークス。
いずれもGⅠへの重要な前哨戦であり、注目度の高い一日となるのは間違いない。
しかし、競馬の本質は必ずしも「重賞」だけにあるわけではない。
表舞台の裏で、未来の主役がひっそりと牙を研いでいることもある。
今週の日曜競馬、その“裏側”に、私はどうしても目を向けずにはいられない。
なぜなら、次代の女王候補と呼ぶにふさわしい2頭の牝馬が出走を予定しているからだ。
どちらもまだGⅠどころか重賞馬ですらない。
だが、その時計と内容を精査すると、過去の名馬たちと並び立つ“異質さ”が確かに存在している。
1頭目:まだ2勝クラス──しかし中身は“別格”
東京7レース・4歳以上2勝クラス

ボウウィンドウ(美浦・手塚厩舎)
最初に紹介したいのは、東京7レースに出走するボウウィンドウ。
美浦・手塚厩舎所属の牝馬で、キャリアは5戦2勝。
クラスだけを見れば、まだ2勝クラスの身だ。
しかし、この馬を「よくいる条件馬」と一括りにするのは、あまりにも危険だ。
注目すべきは、2走前の1勝クラス。
スタートを決めると、先行馬を視界に入れながら好位を確保。
最内枠からロスなくインコースを追走し、直線では一度外へ進路を切り替えながらもしっかりと反応した。
先に抜け出していたエテルニータ、メアヴィアをきっちりと捕らえ、最後はやや差を広げての勝利。
内容、立ち回り、そして何より数字が異常だった。
この時の勝ち時計は1分57秒6。
4ハロン46秒6、上がり3ハロンは33秒7。
東京芝2000mという舞台で、この水準をクリアした馬は過去10年でもごくわずか。
しかも、該当馬の中にはGⅠを複数勝った名馬たちが名を連ねる。
それらと“同列の数字”を、まだ1勝クラスの牝馬が叩き出したという事実。
これは明らかに普通ではない。
牝馬としては完全に異次元の時計であり、能力の底が見えない。
前走は2着に敗れたが、相手は2勝クラスでも上位常連のレイニング。
しかも牡馬相手の一戦であり、力負けというより「相手が強すぎた」という印象が強い。
ここで評価を下げる理由は、どこにも見当たらない。
むしろ私は、この馬を今年のエリザベス女王杯で見てみたい存在として、早い段階からマークしている。

2頭目:32秒5という“禁断の末脚”
東京10レース・節分ステークス

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ウイントワイライト(栗東・西園厩舎)
続いて取り上げたいのが、東京10レース・節分ステークスに出走するウイントワイライト。
栗東・西園厩舎所属の牝馬で、こちらもまだ条件クラスの立場にある。
しかし、この馬が見せた末脚は、はっきり言って衝撃的だった。
特に強烈だったのが、2走前の精進湖特別。
スタート直後に接触があり、位置取りは後方。
道中は無理をせず、じっくりと脚を溜め、直線では最後方からの競馬となった。
前有利の流れ、東京1400mという舞台設定。
普通なら「届かない」と判断されてもおかしくない状況だった。
しかし直線で外に持ち出されると、一気にギアが切り替わる。
鋭い瞬発力で前との差を一気に詰め、内にいた2頭に並びかけ、そして交わした。
結果は差し切り勝ち。
5か月ぶりの実戦とは思えない仕上がりで、着差以上の完勝だった。
何より驚かされたのは、上がり3ハロン32秒5という数字。
これは1400m〜1600m戦線においても、滅多にお目にかかれない領域だ。
過去10年で、同条件・同水準の末脚を記録した馬はごくわずか。
その中には、GⅠ馬、そして世代を代表する名馬が含まれている。
つまりウイントワイライトは、現役世代でもトップクラスの瞬発力を持っている可能性があるということだ。
前走は直線で完全に前が詰まり、全く力を発揮できず12着。
だが、それは敗因が明確すぎる一戦であり、度外視が妥当だろう。
今回は長い直線を誇る東京コース。
スムーズに進路さえ確保できれば、この馬の末脚が炸裂する可能性は十分にある。

静かに始まる“女王への道”
今回取り上げた2頭は、いずれもまだ条件クラスの存在だ。
しかし共通しているのは、過去の名馬たちと比較しても遜色のない時計とラップを記録しているという点にある。
競馬において、時計とラップは嘘をつかない。
クラスや人気以上に、本質的な能力を映し出す指標だ。
だからこそ私は、この2頭を「次代の女王候補」と呼びたい。
派手さはないかもしれない。
だが、確実に“本物の資質”を備えている。
今年の競馬を追っていく上で、間違いなく注視すべき2頭。
重賞の裏で始まる、静かで確かな物語を、見逃してほしくない。


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