速すぎた天才は、再び走り出した

今後に注目すべき馬

――小倉の地で甦ったキングスコール

先週、小倉競馬場は2026年の幕を開けた。
開幕週のハイライトとなったのは、ジョスランが初めて重賞タイトルを手にした小倉牝馬ステークスだ。鞍上の**クリストフ・ルメール**は、この勝利によって史上8人目となるJRA全10場重賞制覇という偉業を成し遂げた。

だが、そんな歴史的瞬間が訪れる少し前。
同じ小倉競馬場で、ひっそりと、しかし確かな衝撃を残した一頭がいた。

小倉10レース、海の中道特別。
そこで復活の狼煙を上げたのが、栗東・矢作厩舎所属――キングスコールである。

2歳時に見せた“異常な才能”

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キングスコールが初めて競馬ファンの前に姿を現したのは、一昨年7月の札幌競馬場だった。
デビュー戦からその走りは群を抜いていた。道中は余裕たっぷりに進み、直線では軽く促されただけで後続を突き放す。結果は3馬身差の圧勝。しかも、2歳コースレコードという“数字”まで添えての勝利だった。

この一戦で、キングスコールは一気に「未来の怪物候補」として注目を集める存在となる。
矢作厩舎、完成度の高い走り、そして衝撃的なタイム。クラシックを意識せずにはいられない素材だった。

突然訪れた暗転

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しかし、順風満帆に見えた競走生活は、思わぬ形で暗転する。
キングスコールは剥離骨折を発症。戦線を離脱し、約半年という長い時間をリハビリに費やすことになった。

復帰初戦となったスプリングステークスでは3着に好走。能力が失われていないことは示したものの、そこから歯車が噛み合わなくなる。
レースに出ては敗れ、また敗れる。条件クラスですら勝ち切れない日々が続き、デビュー戦の輝きは遠い過去のものになっていった。

デビューから9戦でわずか1勝。
かつての期待値を知るファンほど、その成績に落胆したはずだ。筆者自身も、昨年のクラシックで注目していただけに、連敗を重ねる姿には大きなショックを覚えた。

小倉で迎えた“転機”

年が変わり、舞台は小倉競馬場へ。
ここで陣営が下した決断は「距離延長」だった。挑戦するのは2600メートル。キングスコールにとって、2500メートルを超える距離はこれが初めてだった。

だが、もともとこの馬は高い持久力を秘めているタイプ。折り合いに不安はなく、長く脚を使える点はむしろ長距離向きとも言える。
小倉の平坦コースも、その特性を最大限に活かせる条件だった。

“大逃げ”からの覚醒

キングスコール、小倉10R 海の中道特別 圧勝! | うまの具!

レースが始まると、キングスコールは迷いなく先頭へ。
スタート直後から主導権を握り、向こう正面では後続との差をぐんぐん広げていく。いわゆる“大逃げ”の形だ。

しかし、3コーナーに差し掛かる頃、後続との差は徐々に縮まってきた。
ここで多くのファンは思ったはずだ。「さすがにスタミナがもたないのではないか」と。

だが、直線に入った瞬間――キングスコールは一気に目を覚ます。
再び加速し、後続を突き放す。追いすがる馬たちを寄せ付けず、その差はみるみるうちに広がっていった。

結果は6馬身差の圧勝。
約半年ぶりとなる勝利は、疑いようのない内容だった。

数字が示す“本物”の可能性

特筆すべきは、そのラップだ。
キングスコールは最後の2ハロンを22秒5で走破している。

過去10年、2500~3200メートルの長距離戦において、上がり2Fで22秒5以内を記録した馬はわずか8頭。その中には――
フィエールマン(GⅠ3勝)、シュヴァルグラン(GⅠ1勝)、ゴールドアクター(GⅠ1勝)といった名馬が名を連ねる。
該当馬8頭中、実に5頭が重賞馬という事実が、この数字の価値を物語っている。

初の長距離戦で、このラップ。この勝利が単なる条件戦の一勝で終わらない可能性は、十分にある。

速すぎた天才の“第二章”

キングスコールが激走、新馬戦でソダシのレコードを破る

2歳時、天才と呼ばれたキングスコール。
その才能は、距離延長という新たな武器を得て、再び輝きを放ち始めた。

競走馬のキャリアは、決して一直線ではない。
挫折があり、遠回りがあり、それでも走り続けることで見えてくる景色がある。

小倉の地で見せたこの一戦は、キングスコールにとって“終わり”ではなく“始まり”だ。
速すぎた天才が、本来進むべき軌道へ戻ってくる――。

その復活の物語を、私たちは心から願い、そして見届けたい。

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