今年の福島で、とんでもない数字を残した一頭の2歳牝馬がいます。
その名は――リサナウト。
まだキャリアは、わずか1戦。
当然ながら、この段階で将来の活躍を断定することはできません。
それでもデビュー戦で記録した勝ち時計、レース後半のラップ、そして日本競馬を代表する名牝へとつながる血統を見ると、今後の走りに期待したくなるだけの材料が揃っています。
今週日曜日、中山で行われる2歳牝馬限定戦――サフラン賞。
ここに、デビュー戦で強烈なパフォーマンスを見せたリサナウトが出走します。
今回は1800mから1600mへの距離短縮。
初戦とは異なる条件で、この素質馬はどのような走りを見せるのでしょうか。
今回は、リサナウトのデビュー戦で記録された数字と血統から、その魅力を詳しく見ていきます。
デビュー戦は福島芝1800m

リサナウトがデビューしたのは、今年7月。
舞台は福島芝1800m。
稍重馬場で行われた2歳新馬戦でした。
初出走ながら1番人気に支持されたリサナウトは、好スタートを決めるとスッと前へ。
無理にハナを奪うことはせず、2番手につけてレースを進めます。
道中ではしっかりと折り合い、前を走る馬を射程圏に入れながら追走。
初めての実戦とは思えないほど、落ち着いたレース運びを見せました。
そして、レースが動き始めたのが3コーナー付近。
リサナウトも徐々に前との差を詰めていきます。
4コーナーを迎える頃には、その手応えは十分。
騎手が必死に促しているわけではありません。
むしろ、抑え切れないほどの手応えで前へ進出。
そのまま先頭に並びかけて直線を迎えました。
ここからが圧巻でした。
直線に入って本格的に追い出されると、後続との差は一気に広がっていきます。
早めに先頭へ立ったにもかかわらず、その脚色は最後までほとんど衰えません。
終わってみれば――
2着に3馬身半差。
リサナウトは、デビュー戦を完勝。
着差だけではなく、レース内容にも余裕を感じさせる勝利でした。
勝ち時計は1分49秒9

そして、この新馬戦で注目したいポイントの一つが――勝ち時計です。
記録されたタイムは、
1分49秒9。
稍重だったことも考えると、2歳夏のデビュー戦として非常に興味深い数字です。
そこで私が調べたのが、
「福島芝1800mで行われた2歳新馬戦の混合戦で、勝ち時計1分49秒9以内」
という条件。
さらに、ここから牝馬に絞って過去の該当馬を確認しました。
すると、非常に興味深い名前が出てきます。
――ノームコア。
後に古馬牝馬の頂点を争う存在となったG1馬です。
ノームコアは2018年のヴィクトリアマイルを制覇。
さらに香港でも大舞台を制するなど、国内外で活躍しました。
そんなノームコアも、2歳時に福島芝1800mの新馬戦を好時計で勝利した一頭。
そして今年――
リサナウトが新たにこのタイム基準へ名前を加えました。
もちろん、同じ条件の時計を記録したからといって、リサナウトが将来的にノームコアと同じ実績を残すという意味ではありません。
競馬では馬場状態や展開、メンバー構成などによって時計の価値は変化します。
ただ、過去の優秀馬と同じような条件で目を引く数字を残したことは、リサナウトの能力を考えるうえで一つの興味深い材料でしょう。
本当に注目したい「後半4ハロン46秒7」
しかし――
個人的にリサナウトのデビュー戦でさらに注目したいのは、勝ち時計だけではありません。
それが、レース後半のラップです。
ラスト4ハロンは――
46秒7。
その内訳を見ると、
11秒7-11秒9-11秒6-11秒5。
非常に美しいラップを刻んでいます。
特に注目したいのが、最後の1ハロン。
リサナウトは4コーナーですでに先頭へ並びかけ、直線では早い段階から抜け出しています。
つまり、後方で脚を溜め、最後の一瞬だけ爆発的な末脚を使ったわけではありません。
比較的早い段階から脚を使いながら――
最後までスピードを維持している。
しかもラスト2ハロンは、
11秒6-11秒5。
最後の1ハロンで失速するどころか、数字上は再び加速しています。
ここが非常に興味深いポイントです。
一般的に、早めに動けば最後は苦しくなりやすいもの。
まして2歳夏の新馬戦です。
まだ競走馬として完成していない時期だけに、直線で先頭へ立ったあと、最後にラップを落とすケースも珍しくありません。
しかしリサナウトは違いました。
早めに先頭へ立ちながら、最後まで脚色を大きく鈍らせなかった。
速い脚を一瞬だけ使うのではなく、高いスピードを持続できる。
これこそ、デビュー戦で個人的に最も印象に残ったポイントです。
血統を見れば祖母は名牝エアグルーヴ

そして――
デビュー戦の走りに期待を抱かせるもう一つの理由が、その血統です。
父は――リオンディーズ。
母父は――ディープインパクト。
この時点でも、日本競馬を代表する血が並んでいます。
しかし、さらに母系を遡ると、競馬ファンなら誰もが知る名牝へとたどり着きます。
祖母は――
エアグルーヴ。
天皇賞・秋やオークスを制し、競走馬として一時代を築いただけではなく、繁殖牝馬としても日本競馬に極めて大きな影響を残した名牝です。
リサナウトの母グルヴェイグも重賞勝ち馬。
さらに、その一族からは数々の活躍馬が誕生しています。
母系を広げれば、
ドゥラメンテ。
ルーラーシップ。
など、日本競馬の歴史に名前を刻んだG1馬たちにつながる名牝系です。
単に「良血」という一言では片付けられないほど、長年にわたってトップクラスの競走馬を送り出してきたファミリー。
そこから現れた新たな素質馬が――リサナウトです。
デビュー戦の数字だけでも十分に興味深い存在ですが、その背景にこの血統があることを考えると、今後どこまで成長するのか非常に楽しみになります。
サフラン賞では1800mから1600mへ
ただし――
今回のサフラン賞では、デビュー戦から大きく条件が変わります。
福島芝1800mから、
中山芝1600mへ。
200mの距離短縮です。
ここは一つのポイントになるでしょう。
デビュー戦は道中でペースが緩む区間がありました。
そこでリサナウトは無理をせず2番手で折り合い、十分に余力を残した状態から後半の勝負へ持ち込むことができています。
一方、マイル戦になれば1800m戦よりも序盤から流れる可能性があります。
道中の追走ペースが上がった時に、デビュー戦と同じような余裕を保てるのか。
そして、速い流れを経験したうえで最後まで脚を持続できるのか。
ここは、まだ分かりません。
だからこそ――
今回のサフラン賞は、リサナウトの能力を測るうえで非常に興味深い一戦になると考えています。
初戦で見せた先行力がマイルでも通用するのか。
後半4ハロン46秒7という持続力を、違う展開でも発揮できるのか。
2戦目だからこそ見えてくる部分も多いでしょう。
牝馬クラシック戦線へ名乗りを上げるか
まだ1戦1勝。
現時点では、リサナウトは何か大きなタイトルを獲得した馬ではありません。
しかし――
デビュー戦で見せた先行力。
福島芝1800mで記録した1分49秒9という勝ち時計。
そして、
11秒7-11秒9-11秒6-11秒5。
後半4ハロン46秒7という持続力。
さらに、名牝エアグルーヴへとつながる血統。
これだけ興味深い材料を持った2歳牝馬であれば、2戦目に注目したくなるのは当然でしょう。
ノームコアも記録した――
福島芝1800m、2歳新馬戦での好時計。
そのタイム基準に今年、新たに名前を加えたリサナウト。
もちろん、本当の評価が決まるのはこれからです。
新馬戦とは違う距離。
違う競馬場。
そして、一度レースを経験した馬たちとの2戦目。
ここでどのような走りを見せるのかによって、リサナウトの新たな一面が見えてくるかもしれません。
果たして――
名牝エアグルーヴの血を受け継ぐ2歳牝馬が、ここから牝馬クラシック戦線へ名乗りを上げるのか。
まずは今週のサフラン賞。
リサナウトの走りに――注目です。

コメント