ロマンチックウォリアー級の怪物ラップ――。
今週土曜日、新潟競馬場では芝の重賞競走は行われない。
多くの競馬ファンの注目は、翌日に開催される3歳ダート王決定戦・レパードステークスへ向けられていることだろう。
そのため、土曜日の芝競走は比較的落ち着いた一日になるかもしれない。
しかし、その静かな開催の裏で、一頭の快速牝馬が再びターフへ姿を現す。
土曜・新潟6R、三面川特別。
その名は――ラベルセーヌ。
まだキャリアはわずか3戦。
重賞どころかオープン競走すら走っていない一頭だ。
しかし、彼女がこれまで残してきた数字を詳しく分析すると、そこには歴代の名馬たちと肩を並べるほどの衝撃的な内容が隠されていた。
それは単なる勝利ではない。
世界最強クラスの競走馬・ロマンチックウォリアーと同じ水準のラップを刻んだという事実である。
今回は、そのラベルセーヌの能力をデータから徹底的に掘り下げていきたい。

遅れてきた才能
ラベルセーヌがデビューしたのは3歳3月。
近年では2歳夏からデビューする有力馬が多い中、この時期の初陣は決して早いとは言えない。
しかし、そのデビュー戦で彼女は周囲の予想を大きく覆した。
舞台は中山芝1800m。
スタートから落ち着いた競馬を見せると、最後の直線では力強く抜け出し快勝。
そして記録した勝ち時計は、未勝利戦として歴代最速クラス。
デビュー戦とは思えない完成度の高さを示したのである。
普通であれば、デビューが遅い馬はまだ体質面や精神面が未完成であるケースも多い。
しかしラベルセーヌは違った。
初戦から一線級を思わせるパフォーマンスを披露し、その才能の片鱗を見せつけた。
その後も順調にキャリアを積み、現在は3戦2勝。
数字だけを見れば目立たないかもしれない。
しかし、その内容を詳しく見ると、この馬の能力は勝ち星以上に高く評価すべきものである。
真価を示した東京マイル
特に注目したいのが前走の東京芝1600m・1勝クラスだ。
スタートは決して速くなかった。
それでも鞍上は積極的にポジションを取りに行き、好位を確保。
決して楽をする競馬ではない。
前半600mは35秒4。
しかも馬場は稍重。
時計のかかるコンディションを考えれば、前半から一定の負荷がかかる流れだった。
それでもラベルセーヌは終始折り合いを欠くことなく追走。
道中のリズムは非常にスムーズで、余裕すら感じさせる内容だった。
4コーナーを回る頃にはまだ手応え十分。
そして勝負どころとなる最後の直線を迎える。
力強く伸び続けた末脚

直線では外へ持ち出されると、一気に加速。
内で粘る各馬を一頭ずつ確実に交わしていく。
派手な瞬発力というよりも、長く脚を使い続ける持続力が際立っていた。
ゴール前ではしっかり抜け出し、そのまま快勝。
最後まで脚色は全く衰えず、後続に付け入る隙を与えなかった。
着差だけを見れば圧勝ではない。
しかし競馬は着差だけで能力を判断できるスポーツではない。
本当に重要なのは、「どのような流れで、どのようなラップを刻んだか」である。
そして、このレースには驚くべき数字が隠されていた。
本当に凄いのはラップだった
勝ち時計は1分33秒8。
そして後半4ハロンは46秒8。
この数字だけを見ると、それほど特別には感じない人もいるかもしれない。
しかし条件を絞って過去のデータを調べてみると、その価値は一気に跳ね上がる。
対象は過去10年間の東京芝1600m・稍重。
さらに、
・前半3ハロン35秒4以内
・後半4ハロン46秒8以内
という非常に厳しい条件で検索すると、該当した勝ち馬はわずか5頭しか存在しなかった。
その5頭とは、
ロマンチックウォリアー
グランアレグリア
ノームコア
ジュールポレール
ブレスジャーニー
である。
競馬ファンなら説明するまでもない豪華な顔ぶれだ。
グランアレグリアはマイルGⅠを席巻した歴史的名牝。
ノームコアもヴィクトリアマイルを制したGⅠ馬。
ジュールポレールも同じくヴィクトリアマイル優勝馬。
そしてロマンチックウォリアーは香港を代表する世界的名馬であり、日本でも安田記念を制した世界トップクラスの実力馬である。
さらにブレスジャーニーも重賞勝ち馬。
つまり、この条件に該当した5頭は全て重賞馬。
そのうち4頭がGⅠ馬という驚異的な結果となっている。
ロマンチックウォリアーと並んだ価値
もちろん、ラベルセーヌが現時点でロマンチックウォリアーと同じ能力を持っていると言いたいわけではない。
実績も経験もまったく違う。
しかし、「そのレースで刻んだラップ」という一点だけを切り取れば、世界トップクラスの名馬たちと同じ領域へ到達したことになる。
これは偶然では説明できない。
競馬では時計だけではなく、どのような流れでその時計を記録したのかが重要になる。
速い前半を追走しながら、最後まで高いスピードを維持する。
この能力は簡単に身につくものではない。
だからこそ、このラップには非常に高い価値がある。
もし今後さらに経験を積み、馬体が完成していけば、重賞戦線でも十分通用する可能性は高いだろう。
いや、それどころかGⅠ戦線へ歩みを進めるだけの素質を秘めているかもしれない。
血統が示すさらなる成長力

血統面から見ても将来性は非常に魅力的だ。
父はキズナ。
説明不要の日本を代表する種牡馬であり、古馬になってから本格化する産駒も多い。
さらに母ラフォルスは海外GⅡ勝ち馬。
そして欧州血統であるPower、Samumの血も受け継いでおり、持続力やスタミナ、そして成長力を兼ね備えた配合となっている。
早熟というよりは、年齢を重ねるごとに能力を伸ばしていくタイプと言えるだろう。
まだ3歳夏。
完成形はさらに先にある。
そう考えると、現在のパフォーマンスはまだ序章に過ぎない可能性すらある。
この夏、さらに飛躍できるか
デビュー戦では未勝利戦歴代最速クラスの勝ち時計。
そして前走ではロマンチックウォリアー級の怪物ラップ。
まだキャリアはわずか3戦。
それでも残してきた数字は、すでに歴代の名馬たちと肩を並べ始めている。
もちろん、競馬は数字だけで決まる世界ではない。
相手関係、展開、馬場、距離。
あらゆる要素が勝敗を左右する。
それでも、一流馬には必ず一流馬だけが残せる数字が存在する。
ラベルセーヌは、その入口に立っている一頭なのかもしれない。
果たして、この夏さらなる進化を遂げるのか。
それとも、今回も私たちの想像を超える走りを見せてくれるのか。
その答えは、今週土曜日。
新潟6R・三面川特別で明らかになる。
未来のGⅠ馬候補か、それとも世界級へ羽ばたく存在なのか。
その一戦から、目を離すことはできない。

コメント