現在でも多くの競馬ファンから愛され続ける存在。
平成競馬を語る上で、決して外すことのできない一頭がいる。
女傑・ヒシアマゾン。

牡馬相手に一歩も引かず、真正面からねじ伏せていくその姿は、
「牝馬でもここまでやれる」
という価値観を、当時の競馬界に強烈に刻み込んだ。
引退からおよそ30年。
それでもなお、ヒシアマゾンという名前が語られるたび、
多くのファンの脳裏には、あの豪快な末脚と、勝負根性むき出しの走りが鮮明に蘇る。
牝馬が牡馬をなぎ倒す――
その象徴として、ヒシアマゾンは今もなお“伝説”の存在だ。
時は流れ、2026年1月。
そのヒシアマゾンの血を受け継ぐクラシック候補が、
今週の中山競馬場に姿を現す。
土曜・中山9レース
菜の花賞
そこに出走する一頭の牝馬。
その名は、ファンクション。

ファンクションがデビューしたのは、昨年11月の福島競馬場。
舞台は2歳牝馬にとって決して楽ではない、福島1800メートルだった。
福島競馬場は小回りで、直線も短い。
さらに急坂こそないものの、コーナーがきつく、
スピードだけでなくパワーと持続力が求められるタフな舞台だ。
そんな条件の中、彼女は単勝30倍台の7番人気。
決して注目度の高い存在ではなかった。
しかも枠順は大外。
小回りコースでは明確な不利とされる条件が重なっていた。
しかし、ゲートが開くと状況は一変する。
大外枠からのスタートにもかかわらず、
ファンクションは躊躇なく前へ出た。
スッと先行勢に取り付き、道中は2番手。
無理に押していく形ではなく、
自然体でスピードに乗せるような走りだった。
この時点で、ただ者ではない気配が漂い始める。
そして直線。
ファンクションは手応え十分のまま先頭へ。
そこからが、この馬の真骨頂だった。
ラスト2ハロン、
11秒5 → 11秒2。
明確な加速ラップ。
しかも、福島1800メートルという条件を考えれば、
これは極めて優秀な数字だ。
後続が必死に追いすがる中、
ファンクションは脚色を一切鈍らせることなく、
そのままゴール板を駆け抜けた。
見事な初勝利だった。

このレースで、特筆すべきポイントは一つではない。
まず注目すべきは、上がり4ハロン46秒5。
過去10年の2歳福島1800メートル戦を振り返っても、
この数字を記録した馬は存在しない。
さらに、ラスト1ハロン11秒2。
これも過去最速のラップだ。
大外枠からスタートし、
小回りで不利とされる条件を背負いながら、
それでもなお記録されたこの上がり。
これは単なる「展開が向いた勝利」ではない。
能力がなければ、絶対に出せない数字だ。
そして、ファンクションを語る上で欠かせないのが、その血統背景だ。

4代前の母親に名を連ねるのが、ヒシアマゾン。
つまり、ファンクションはヒシアマゾンの曾孫にあたる。
ヒシアマゾンが引退してから約30年。
競馬の主流は変わり、
調教技術も、育成環境も、馬場傾向も大きく変化した。
そんな時代の流れの中で、
再び“アマゾンの血”を引く逸材が誕生したことは、
競馬ファンにとって感慨深い出来事と言えるだろう。
今週土曜の菜の花賞。
ファンクションにとっては、キャリア2戦目となる一戦だ。
実は陣営は、先週のフェアリーステークスにも登録していた。
それだけ、この馬の素材に対する期待が高いことがうかがえる。
結果的に除外となり、
舞台を菜の花賞へと移すことになったが、
距離・コースともに決して悪い条件ではない。
むしろ、中山という舞台で、
この馬の真価が問われる一戦になるだろう。
福島で刻んだ過去最速の数字。
大外枠をものともしなかったレースセンス。
そして、ヒシアマゾンから受け継がれる血。
すべてが揃った今、
ファンクションがどこまでやれるのか。
それは単なる1勝馬の話ではない。
クラシック戦線に名乗りを上げる存在になれるのか――
その試金石が、この菜の花賞だ。
ヒシアマゾンの末裔、ファンクション。
30年の時を越え、再び“女傑の血”が動き出す。
その走りに、大いに期待したい。

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