春の主役たちが不在の菊花賞
2025年10月26日、京都競馬場で3歳牡馬クラシック最終章「菊花賞」が幕を開ける。
今年の菊花賞は、例年以上に“混戦”の様相を呈している。
その理由は明白だ。
まず、皐月賞馬ミュージアムマイルは天皇賞(秋)へ進むプランを選択。
さらに、春の日本ダービーとNHKマイルカップを制したクロワデュノールは、遠くフランスの凱旋門賞に挑戦する。
つまり、春の二冠馬が菊花賞には不在となるのだ。
例年ならクラシック路線を引っ張る存在が、三冠最終戦に集結する。
しかし今年はその主役がいない。だからこそ、秋の菊花賞はどの馬にもチャンスが広がる、混沌とした戦いが予想されている。
そんな状況の中で、阪神競馬場で行われた「兵庫特別」にて、一頭の“新星”がその存在を強烈に示した。
その馬の名は――ダノンシーマ。

ダノン軍団の秘蔵っ子
ダノンシーマは栗東・中内田充正厩舎の管理馬。
一昨年のセリ市場で、実に約3億4000万円という超高額で落札された逸材だ。
この金額だけでも競馬ファンを驚かせるに十分だが、血統背景もまた豪華絢爛。
母はアメリカのケンタッキーオークスを制した名牝インクルードベティ。
米国のトップレースを制した実績を持つ良血であり、日本に輸入されてからはその繁殖能力に大きな期待が寄せられていた。
そんな血統背景と、ダノン軍団という大手馬主の後押しが相まって、デビュー前から「秘蔵っ子」と目されていたのがダノンシーマだ。
兵庫特別 ― 圧倒的一番人気に応えた走り
2025年9月末、阪神競馬場で行われた兵庫特別(芝2400m)。
ここでダノンシーマは単勝1.3倍という圧倒的な支持を受けて出走した。
レース序盤のペースはゆったりとした流れ。
ダノンシーマは落ち着いて中団に構え、無駄のない走りで折り合いをつける。
迎えた直線――。
外に持ち出すと一気にギアチェンジ。
まるで別次元の走りを披露するかのように、他馬を置き去りにして突き抜けた。
結果は完勝。
勝ち時計は2分25秒8、そして上がり3ハロンは33秒5。
この数字は単なる勝利以上の価値を持っていた。

名馬しか刻めない“歴史級の数字”
ダノンシーマの兵庫特別での走破時計「2分25秒8」と、上がり「33秒5」。
この条件を同時に満たした馬は、日本競馬の歴史の中でもごくわずかしかいない。
その名を挙げれば、
- ドウデュース(GI5勝)
- ラブリーデイ(GI2勝)
- ダノンデサイル(GI2勝)
- シャフリヤール(GI1勝)
- ヴェラアズール(GI1勝)
いずれも歴史に名を刻むGI馬たちばかり。
つまり、ダノンシーマの記録は「名馬の領域」に足を踏み入れた証明とも言えるのだ。
さらに比較対象として注目すべきは、同じ2400mで行われた神戸新聞杯の勝ち時計だ。
神戸新聞杯よりも、兵庫特別のダノンシーマの走破時計の方が0.6秒速い。
重賞と条件戦という舞台の違いを差し引いても、この数字がいかに優秀かが如実に示されている。
春には出走できなかったクラシック
ダノンシーマは早くから注目を浴びていた存在ではあるが、2歳から3歳春にかけては順調さを欠いた。
加速に時間がかかる面があったこと、そして距離不足の影響もあり、クラシック三冠の前半戦――皐月賞や日本ダービーには出走できなかった。
だが秋を迎え、成長を遂げた姿は一変。
兵庫特別で見せた走りは、「本格化」という言葉がふさわしいものだった。
菊花賞出走なるか?
現時点では菊花賞への出走はまだ確定していない。
しかし、賞金的には出走権を十分に確保している状況だ。
仮にダノンシーマが菊花賞のゲートに立つとすれば、間違いなくファンの注目を集める存在となるだろう。
3億4000万円という破格の馬代金、アメリカ血統の良血、そして“歴史級”の走破時計。
どれを取っても話題性は十分すぎる。
混戦模様の菊花賞で、“最大の刺客”として旋風を巻き起こす可能性は高い。
まとめ ― 菊花賞を揺るがす存在へ
2025年の菊花賞は、皐月賞馬もダービー馬もいない異例の年。
だからこそ、秋の新星たちにとっては大きなチャンスだ。
その中で、兵庫特別を快勝し、歴史級の時計を叩き出したダノンシーマ。
「3億4000万円の衝撃」というキャッチコピーは伊達ではなく、実際の走りでその価値を証明してみせた。
もし菊花賞に出走してくるのであれば、間違いなく最大の注目馬の一頭となる。
そして、クラシック最終章を揺るがす存在になるのか――。
競馬ファンの視線は、いま京都競馬場のターフに集まっている。

Xユーザーのしほさん: 「2025.09.28 阪神9R 兵庫特別 ダノンシーマ&西村淳也騎手 #キタサンブラック産駒 #中内田充正厩舎 https://t.co/Milsc00qmj」 / X
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