
出遅れから始まった衝撃のドラマ
──その瞬間、スタンドがどよめいた。
8月17日、中京競馬場・第1Rの2歳未勝利戦。
単勝1.1倍という圧倒的な支持を集めた良血馬ローベルクランツが、まさかの大きな出遅れを喫したのである。

ゲートが開いた直後、ダッシュがつかず前との差はみるみるうちに広がっていく。
その差、実に5馬身以上。
序盤は最後方に沈み込むような姿に、観客の間には「まさかこのまま終わってしまうのか?」という不安と焦りが走った。
しかし、このレースはここからが本番だった。
向こう正面、眠れる獅子が目を覚ます
淡々と流れる前半のペース。ローベルクランツは焦ることなく、鞍上と呼吸を合わせる。
向こう正面に差し掛かると、ついにエンジンがかかり始めた。
ゆっくりと、しかし着実にポジションを上げていく姿は、まるで眠っていた獅子が目を覚ましたかのよう。
その脚には荒々しさと爆発力が同居し、観客の視線は否応なしに釘付けとなった。
直線で弾けた驚異の末脚
迎えた直線。鞍上がわずかに手綱を解くと、ローベルクランツは弾けるような加速を見せた。
上がり3ハロンは驚異の 33秒9。
切り裂くような末脚で、前を走るライバルたちを次々と置き去りにする。
気づけば2着馬に3馬身、さらに3着馬には4馬身という大差をつけてゴール板を駆け抜けていた。
勝ち時計は 2分0秒7。
未勝利戦としては破格とも言えるタイムである。

データが裏付ける「規格外」の走り
中京芝2000mという舞台で、勝ち時計2分1秒以内かつ上がり3F33秒台を記録した馬は、過去10年を遡っても一昨年の共同通信杯を制した ファントムシーフ ただ一頭しかいない。
この数字がどれほど価値のあるものか、競馬ファンならすぐに理解できるはずだ。
つまり、今回のローベルクランツのパフォーマンスは「未勝利戦の枠を超えた」ものだったと言える。

実は前走から“片鱗”を見せていた
今回の衝撃の勝利は、決して偶然ではなかった。
デビュー戦となった前走でも、スタートで大きく出遅れながら、メンバー中最速となる 上がり33秒5 を記録していた。
結果こそ2着に敗れたが、その末脚はすでに「規格外」であることを証明していたのである。
つまり今回の勝利は、潜在能力の一端がついに表舞台で爆発したにすぎない。

血統と厩舎背景
ローベルクランツは、血統的にも注目を集める存在だ。
父は日本競馬を代表する名血、母もスピードと持続力を兼ね備えた良血牝馬。
育成を担当する厩舎は過去に数々の名馬を世に送り出しており、管理体制も一流だ。
今回のような“出遅れからの豪脚”は気性難の裏返しとも言えるが、裏を返せば爆発的なポテンシャルを秘めている証拠でもある。
明確な課題:ゲートと気性
もちろん、完璧な馬ではない。
最大の課題は ゲート難 だ。
調教師も「気性の荒さ」を認めており、育成は慎重に進められている。
前走では掛かり癖が目立ったが、今回はその点がある程度改善されていたのは明るい材料だ。
とはいえ、今後もスタートでの不安がつきまとう以上、大舞台で致命傷となる可能性もある。

将来への展望
では、このローベルクランツはどこまで行けるのか。
未勝利戦を突破した今、次走は1勝クラス。
今回の内容を再現できれば、早い段階で重賞戦線に乗り込む可能性は高い。
過去の例を見ても、未勝利戦で上がり33秒台を記録した馬は、その後クラシック戦線を賑わせることが多い。
課題を克服できれば、クラシックの舞台に立つ姿も十分に想像できる。
これは単なる未勝利戦か、それとも──
ローベルクランツの走りは、単なる1勝にとどまらない衝撃を残した。
出遅れからの逆襲、33秒9の豪脚、規格外の勝ち時計。
観客の目に焼き付いたのは「未勝利戦の勝者」ではなく、「未来の主役候補」としての姿だったに違いない。
──これは単なる未勝利戦の1勝なのか。
それとも、未来の大舞台へと続く壮大な物語の始まりなのか。
その答えはまだわからない。
だが確かなのは、この日の一戦が彼の名を刻む 第一歩 となったことだ。

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