秋の大舞台へ向けて、いよいよ有力馬たちが動き始めます。
今週行われるのは、菊花賞へとつながる重要な前哨戦――神戸新聞杯。
三冠候補をはじめ、重賞タイトルを持つ実力馬も3頭が出走予定。秋の主役を狙う馬たちが集まり、前哨戦にふさわしい好メンバーとなりました。
実績を考えれば、当然ながら注目は春のクラシック戦線を歩んできた馬たちに集まります。
しかし――。
そんな豪華メンバーの中に、まだ1勝クラスを勝ち上がったばかりでありながら、非常に興味深い数字を残している一頭がいます。
想定11番人気。
その名は――エイシンインアウト。
今回は、前走で5馬身差の圧勝を飾ったこの馬について、そのレース内容とラップ、さらに過去10年のデータや血統から、神戸新聞杯で注目したい理由を詳しく見ていきます。
2か月前まで未勝利だった一頭

エイシンインアウトは、ここまで6戦2勝。
初勝利を挙げたのは今年7月でした。
つまり、わずか2か月ほど前までは未勝利馬だった一頭です。
今回の神戸新聞杯には、春のクラシック戦線で実績を残した馬や重賞馬も出走します。
そうしたメンバーと比較すれば、実績では大きく見劣ります。
想定11番人気という評価も、これまでの戦績だけを見れば不思議ではありません。
しかし――。
前走で見せたパフォーマンスは、それまでの評価を大きく変える可能性を感じさせるものでした。
舞台は札幌芝2000m。
初勝利を挙げて迎えた、昇級初戦の1勝クラスです。
ここでエイシンインアウトは、非常にインパクトのある勝ち方を見せました。
後方2番手から一気に進出
レース序盤、エイシンインアウトは無理にポジションを取りに行きませんでした。
向こう正面では後ろから2番手付近。
2000m戦とはいえ、決して楽な位置ではありません。
ところが――3コーナーに差しかかったところから、レースが大きく動きます。
エイシンインアウトが外から一気に進出。
後方にいたはずの馬が、グングンとポジションを押し上げていきます。
そして4コーナーでは、早くも先行集団を射程圏内へ。
普通なら、ここまでのロングスパートで脚を使っているだけに、直線では勢いが鈍っても不思議ではありません。
しかし、この馬は違いました。
直線へ向いてからも脚色は衰えません。
むしろ――ここからさらに加速。
後続との差を一気に広げ、そのまま独走状態へと持ち込みました。
結果は――2着に5馬身差。
後方から3コーナーで動き、外を回ってポジションを押し上げ、最後は後続を突き放す。
まさに破天荒とも言える勝ち方でした。
展開に恵まれて最後だけ差したわけではありません。
自ら早い段階で動いてレースを変え、それでも最後まで脚を残していた。
昇級初戦だったことを考えても、能力の高さを感じさせる内容だったと思います。
本当に注目したいのは「5馬身差」ではない

ただし、このレースで本当に注目したいのは――5馬身という着差だけではありません。
重要なのは、そこに至るまでのラップです。
このレースの後半5Fは、
12秒1-12秒1-11秒7-11秒5-11秒3。
合計すると――
58秒7。
もちろん58秒7という数字自体も優秀ですが、それ以上に興味深いのが、その中身です。
12秒1から12秒1。
そこから11秒7。
さらに11秒5。
そして最後は――11秒3。
つまり、ゴールへ近づけば近づくほどラップが速くなっています。
これは非常に印象的です。
エイシンインアウトは後方で脚を溜め、直線だけ追い込んだわけではありません。
3コーナーからすでに脚を使っています。
そこから外を回りながらポジションを押し上げ、それでもラスト3Fは、
11秒7-11秒5-11秒3。
失速するどころか、最後まで加速を続けました。
長く脚を使える持続力。
そして、その長い脚を使った後にも、もう一段ギアを上げられる加速力。
この2つを同時に示したことこそ、前走で最も評価したいポイントです。
過去10年で該当したのはソーヴァリアント
では、この前走の数字は札幌芝2000mという舞台において、どの程度のものだったのでしょうか。
そこで過去10年の札幌芝2000mを調べ、以下の2つの条件を設定しました。
勝ち時計1分59秒8以内。
そして、
後半5F58秒7以内。
この両方の条件を満たして勝利した馬を調べると――該当したのはソーヴァリアントのみ。
ソーヴァリアントといえば、その後にチャレンジカップを連覇した実力馬です。
もちろん、条件や馬場状態、展開、相手関係はレースごとに異なります。
そのため、このデータだけをもってエイシンインアウトがソーヴァリアントと同等の能力を持っている、と断定することはできません。
しかし――。
少なくとも、前走で記録した時計と後半ラップが、札幌芝2000mにおいて非常に優秀な水準だったことを示す一つの材料にはなります。
しかもエイシンインアウトは、まだ1勝クラスを勝ったばかり。
完成された古馬ではありません。
3歳夏という、これからさらに成長していく可能性を残した時期に、この数字を記録したことが非常に興味深いところです。
父サトノダイヤモンドから感じる「秋の成長力」

さらに、血統からも今後の成長には期待したくなります。
父は――サトノダイヤモンド。
現役時代は3歳春からトップクラスで活躍しましたが、特に印象的だったのは3歳秋でした。
菊花賞を制してG1初制覇。
そして年末の有馬記念では、古馬の強豪を相手に勝利。
3歳秋に大きな飛躍を遂げ、日本競馬を代表する一頭へと駆け上がりました。
その産駒であるエイシンインアウト自身も、ここにきてパフォーマンスが大きく上昇しています。
7月に初勝利。
そして昇級初戦で5馬身差の圧勝。
春までの戦績だけを見れば、神戸新聞杯で注目されるような存在ではなかったかもしれません。
しかし競走馬、とりわけ3歳馬は、数か月で大きく変わることがあります。
春の時点で完成していた馬だけが、秋も強いとは限りません。
夏を越えて急激に力をつけ、秋になって一気に重賞戦線へ台頭する馬もいます。
だからこそ――。
エイシンインアウトの前走が「たまたま条件が噛み合った一戦」だったのか。
それとも、「本格化の始まり」だったのか。
今回の神戸新聞杯は、それを見極める重要な一戦になりそうです。
1分59秒8、58秒7、そして5馬身差
もちろん今回、相手は一気に強くなります。
1勝クラスから重賞。
しかも神戸新聞杯には、春から世代トップクラスで戦ってきた馬たちが出走します。
これまで戦ってきた相手とは、明らかにレベルが違います。
実績だけを比較すれば、エイシンインアウトが格下なのは間違いありません。
それでも――。
前走で残した数字は、簡単には無視できません。
勝ち時計1分59秒8。
後半5F58秒7。
そして――
2着に5馬身差。
さらに後半5Fは、
12秒1-12秒1-11秒7-11秒5-11秒3。
3コーナーから自ら動きながら、ゴールへ近づくほど加速していく。
これは単に着差が大きかったというだけではなく、レース内容そのものに魅力を感じさせるパフォーマンスでした。
前走だけで重賞級と断定することはできません。
しかし、まだ底を見せていない可能性を感じさせるには十分な内容だったと思います。
神戸新聞杯に現れた「新たな刺客」
春のクラシックを戦った実績馬。
すでに重賞を勝っている馬。
そして、秋にさらなる飛躍を狙う素質馬。
今年の神戸新聞杯にも、さまざまなタイプの有力馬が集まりました。
その中でエイシンインアウトは、まったく異なる道を歩んできました。
春のクラシックとは無縁。
7月まで未勝利。
そこから初勝利を挙げ、わずか2か月ほどで神戸新聞杯へ。
そして、その過程で見せたのが――札幌芝2000mでの5馬身差圧勝でした。
想定11番人気。
実績では決して目立たない存在です。
だからこそ、今回どこまで通用するのか非常に楽しみです。
前走の圧勝は、単なる一戦の好走だったのか。
それとも――。
一頭の素質馬が本格化へ向かい始めた、その最初の一戦だったのか。
1分59秒8。
後半5F58秒7。
ラスト3F、11秒7-11秒5-11秒3。
そして――5馬身差。
前走で残した数字を武器に、いよいよ初めて重賞の舞台へ挑みます。
神戸新聞杯に現れた――
新たな刺客、エイシンインアウト。
ここで春の実績馬たちを相手にどんな走りを見せるのか。
そして、この一戦をきっかけに秋の主役候補へと名乗りを上げることができるのか。
その走りに――注目です。

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