先週の新潟競馬で、今後のクラシック戦線を占う上で非常に興味深い一頭がデビューした。
その名は――コラリオン。
まだキャリアわずか1戦。
当然ながら、この段階で将来を断定することなどできない。
しかし、そのデビュー戦で刻んだ数字を過去の名馬たちと比較していくと、簡単には見過ごすことのできない事実が浮かび上がってくる。
その比較対象となるのが――
無敗の三冠馬・コントレイル。
過去10年の2歳芝1800m戦を振り返っても、コラリオンが記録した極めて厳しい条件を満たして勝利した馬は、コントレイルしか存在しなかった。
果たして、新潟で現れたこの2歳馬はどれほどの可能性を秘めているのか。
今回はコラリオンのデビュー戦を、レース内容、ラップ、そして血統の3つの側面から詳しく振り返っていきたい。

高速馬場が戻った新潟で現れた一頭の新馬
開幕週に降り続いた大雨によって、一度は鳴りを潜めた新潟競馬場の高速馬場。
しかし先週になると馬場状態は回復。
快晴にも恵まれ、新潟競馬場では本来の特徴ともいえる高速決着が次々と生まれていた。
日本屈指の長さを誇る直線。
その舞台では、単純なスピードだけではなく、道中で脚を温存しながら最後にどれだけ速い脚を使えるかという、競走馬の瞬発力が問われる。
そんな新潟で行われた芝1800mのメイクデビュー。
ここで非常に印象的な勝ち方を見せたのがコラリオンだった。
スタートそのものは決して悪くない。
しかし、そこから二の脚がつかず、序盤のポジションは中団となった。
新馬戦では、まだ競馬そのものを理解していない馬も多い。
スタート直後から力んでしまったり、馬群の中で折り合いを欠いたりするケースも珍しくない。
ところがコラリオンには、そのような危うさがほとんど見られなかった。
前半800mは48秒6。
新馬戦として決して楽な流れではない中、馬群の内でじっくりと脚を溜めていく。
折り合いに大きな不安を見せることもなく、鞍上とのコンタクトもスムーズ。
まだ2歳夏のデビュー戦でありながら、その走りからは高い操縦性を感じさせた。
そして、この冷静なレース運びが、後の衝撃的な数字へとつながっていく。
追い出せない。それでも前との差が縮まっていく
レース最大の見どころは、やはり最後の直線だった。
新潟名物の長い直線へ。
通常であれば、ここから各馬が一斉に追い出しを開始する。
コラリオンもいよいよ加速する――。
そう思われた。
しかし、前には馬がいた。
進路がない。
能力を最大限に発揮するためには、一度進路を確保しなければならない状況だった。
ところが鞍上に慌てた様子はない。
馬の手応えを確認しながら外へ進路を求め、ようやく前が開く。
ここから一気に追い出すのか。
そう思った次の瞬間、さらに驚かされた。
鞍上の手が、ほとんど動かない。
それでもコラリオンは、一完歩ごとに前との差を縮めていった。
全力で追われているようには見えない。
ムチによって強く促されているわけでもない。
それにもかかわらず、前を走っていた馬たちとの差がみるみる縮まり、そのまま先頭へ。
最後までほとんどムチを使われることなく、2着馬に2馬身半差をつけてゴールした。
数字上の着差だけなら「2馬身半」。
しかし、その内容を映像で確認すれば、実際の着差以上の余裕があったことは明らかだった。
もし直線でスムーズに進路を確保できていたら。
もし早い段階から本格的に追われていたら。
果たして、どこまでパフォーマンスを上げることができたのか。
そんな想像さえしたくなる内容だった。
本当の衝撃は「48秒6-45秒8」

しかし、コラリオンのデビュー戦を高く評価したい最大の理由は、派手な勝ち方だけではない。
むしろ本当の衝撃は――
レースラップにある。
このレースの前半800mは、
48秒6。
そして後半800mは、
45秒8。
前半から一定以上のスピードで流れながら、後半はそこからさらに2秒8も速い時計でまとめている。
ここで重要なのは、単純に「上がりが速かった」ということではない。
新馬戦では前半が極端なスローペースになり、その結果として後半だけ非常に速い時計が出るケースも存在する。
そのため、後半の時計だけを切り取って評価すると、その馬本来の能力を過大評価してしまう可能性がある。
ところが、今回のコラリオンは違った。
前半800m48秒6以内。
その流れを経験した上で、
後半800m45秒8以内。
この両方を成立させて勝利している。
そこで過去10年の2歳芝1800m戦を対象に、
「前半800m48秒6以内」
「後半800m45秒8以内」
という2つの条件を同時に満たして勝利した馬を調べてみた。
該当したのは――
わずか一頭。
その馬こそ、後に無敗でクラシック三冠を達成することになる、
コントレイルだった。
もちろん、これは「コラリオンがコントレイルと同じ能力を持っている」という意味ではない。
競馬場も馬場状態も展開も異なり、キャリア1戦の2歳馬を歴史的名馬と同列に扱うことはできない。
しかし少なくとも、過去10年間の2歳芝1800mというカテゴリーの中で、極めて高い水準のレースラップを刻んだことは間違いない。
だからこそ、この数字には大きな価値がある。
ラスト2F「10秒9-11秒2」の意味
さらに注目したいのが、最後の2ハロンだ。
レース終盤に刻まれた数字は、
10秒9-11秒2。
すでに一定以上のペースを追走した後で、10秒台のラップが刻まれている。
そしてコラリオン自身は、その区間で直線の進路確保を待たされていた。
前が完全に開いた状態から早々に加速できたわけではない。
それでも、前半800m48秒6から後半800m45秒8という流れを成立させ、その中で最後まで余力を残した。
ここから見えてくるのは、単なる「瞬発力型」という評価だけではない。
ある程度速い流れを追走できるスピード。
そこから長く脚を使うことのできる持続力。
そして最後に一段階ギアを上げることのできる瞬発力。
その複数の能力を、デビュー戦から極めて高い次元で示したのである。
特に将来クラシックを目指す馬にとって、これは非常に重要な要素だろう。
極端なスローペースからの瞬発力勝負だけに強い馬では、レースの流れが変わった際に対応できないことがある。
一方でコラリオンは、少なくとも今回のレースでは、ある程度流れた展開を経験しながら最後にさらに加速することができた。
しかも、まだ全能力を出し切ったようには見えない。
この点に、今後への大きな期待を感じる。
父リオンディーズ×母父ディープインパクト

そしてコラリオンは、血統面にも大きな魅力を持っている。
父はリオンディーズ。
自身は2歳時に朝日杯フューチュリティステークスを制したGⅠ馬であり、種牡馬としてもスピードと高い競走能力を伝えてきた。
そして母の父には、日本競馬史を代表する名馬――
ディープインパクト。
今回コラリオンが新潟の長い直線で見せた瞬発力を考えても、非常に興味深い血統構成といえる。
さらに母系を辿っていけば、そこにはGⅠ級の舞台で活躍した馬たちの名前も並ぶ。
血統は将来の活躍を保証するものではない。
しかし、デビュー戦ですでに高いパフォーマンスを見せた馬に、成長への期待を抱かせる血統背景まで備わっているとなれば、注目しないわけにはいかない。
何より忘れてはいけないのは、
まだ2歳の夏だということ。
競走馬として完成するのは、まだ先の話である。
身体的にも精神的にも成長の余地を大きく残している時期に、これだけのラップを余裕のある手応えで記録した。
今回が完成形ではなく、ここからさらに成長する可能性が残されている。
それこそがコラリオン最大の魅力なのかもしれない。
「小さな玉石」は、いつか宝石になるのか
そして、この馬には非常に印象的な名前が与えられている。
コラリオン。
その名はギリシャ語で、
「小さな玉石」
という意味を持つという。
今はまだデビュー戦を勝っただけの2歳馬だ。
重賞を勝ったわけでもない。
GⅠの舞台を経験したわけでもない。
クラシックへの出走が約束されているわけでもない。
競馬界という巨大な世界に姿を現したばかりの、まさに「小さな玉石」である。
しかし、その最初の一歩で刻んだ数字は、決して平凡なものではなかった。
前半800m48秒6。
後半800m45秒8。
過去10年の2歳芝1800m戦において、この条件を同時に満たして勝利した馬は、無敗の三冠馬コントレイルのみ。
さらに直線では進路を待たされ、最後までほとんどムチを使われることなく2馬身半差。
操縦性、スピード、持続力、瞬発力。
デビュー戦としては、非常に多くの可能性を感じさせる内容だった。
もちろん、競走馬の未来は誰にも分からない。
デビュー戦で衝撃的なパフォーマンスを見せても、その後に壁へぶつかる馬は数え切れないほど存在する。
距離が延びた時にどうなるのか。
多頭数になった時にどう対応するのか。
速い流れを経験した時にも同じ脚を使えるのか。
そして、重賞、GⅠと相手が強くなった時に、どこまで能力を発揮できるのか。
コラリオンにも、これから証明しなければならないことは山ほどある。
それでも――
だからこそ、競馬は面白い。
まだ何者でもない一頭の若駒が、最初に見せた小さな輝き。
その輝きが本物なのかを、これから一戦、一戦、追いかけていくことができる。
コントレイル級の数字を刻んだ、新たな怪物候補。
コラリオン。
クラシックへ。
そして、その先へ――。
今はまだ「小さな玉石」に過ぎない。
しかし、その小さな玉石はいつの日か磨かれ、
世界を照らす大きな宝石へと変わるかもしれない。
次走、この馬がどのような走りを見せるのか。
今後の動向に、ぜひ注目していきたい。

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