【誰も気づいていない怪物候補】函館最終週で歴代級ラップを記録したホウオウザロイヤル

今後に注目すべき馬

重賞が組まれていなかった先週土曜日。全国的には落ち着いた開催となり、多くの競馬ファンの視線は翌日の重賞へ向けられていた。

しかし、競馬は重賞だけで語れるものではない。

その静かな一日の裏側では、各競馬場で見逃すことのできないドラマが数多く生まれていた。

福島競馬場では坂井瑠星騎手と戸崎圭太騎手によるリーディング争いが白熱。一方、北の大地・函館競馬場では丹内祐次騎手が3勝を挙げ、自身初となる函館リーディング獲得へ大きく前進した。

そして、その丹内騎手の騎乗馬の中に、一頭だけ異彩を放った存在がいた。

その名は――ホウオウザロイヤル。

まだ未勝利を勝ち上がったばかりの3歳馬。しかし、そのレース内容を細かく分析すると、単なる未勝利戦の勝ち馬では片付けられないほどの価値を秘めている。

今回は、その走りをラップ・時計・血統という3つの視点から詳しく分析していきたい。


名牝ブラックエンブレムの血を受け継ぐ良血馬

ホウオウザロイヤルの母は、2008年秋華賞を制したブラックエンブレム。

秋華賞では豪快な差し切り勝ちを決め、一気にGⅠ馬へと駆け上がった名牝である。

その名門牝系から誕生したホウオウザロイヤルは、デビュー前から一定の評価を受けていた。

しかし、実戦デビューは3歳7月。

近年は2歳から多くの有力馬がデビューする時代だけに、この時期の初出走は決して早いとは言えない。

そのため、能力に対して半信半疑だったファンも少なくなかっただろう。

それでもデビュー戦では、既走馬を相手にいきなり3着。

勝ち切ることはできなかったものの、初戦としては十分に素質を感じさせる内容だった。

そして迎えた2戦目。

函館4R・芝1200メートル未勝利戦。

単勝2.2倍の1番人気に支持され、初勝利へ挑むことになる。


レース内容は完璧だった

ゲートが開くとスタートは抜群。

迷うことなくハナへ立ち、自らレースを支配する。

1200メートル戦では序盤の位置取りが勝敗を左右することが多いが、その点において理想的な競馬となった。

しかし、本当に評価すべきなのはここからである。

逃げ馬は前半で脚を使い過ぎると、最後の直線で失速するケースがほとんど。

ところがホウオウザロイヤルは違った。

4コーナーではまだ余力十分。

直線へ向くと後続との差はまったく縮まらず、むしろ最後まで脚色は衰えない。

ゴール前ではさらに差を広げ、4馬身差の圧勝。

数字以上に強さを感じさせる内容だった。

逃げて押し切るだけなら珍しくはない。

しかし、終始余裕を感じさせながら後続を寄せ付けなかった点は、高く評価できる。


勝ち時計1分08秒6の価値

今回記録した勝ち時計は1分08秒6。

一見すると、函館1200メートルでは時折見られるタイムにも思える。

しかし、この数字を同日のレースと比較すると印象は大きく変わる。

同日に行われた函館芝1200メートルの1勝クラスよりも0.8秒速いのである。

未勝利戦でありながら、1勝クラスを大きく上回る時計。

しかも舞台は開催最終週。

函館開催の終盤は芝の傷みが進み、開幕週のような高速馬場ではない。

当然ながら時計は出にくくなる。

つまり、1分08秒6という数字は、単純なタイム以上の価値を持っていると言える。

馬場状態まで考慮すると、非常に優秀な勝ち時計だった。


本当に凄いのはラップだった

時計以上に驚かされたのはラップ構成である。

前半3ハロンは34秒1。

決して楽な流れではない。

むしろ未勝利戦としては十分速い部類に入る。

普通ならここまで飛ばせば、ラストは1秒近く失速しても不思議ではない。

しかしホウオウザロイヤルは違った。

後半3ハロンは34秒5。

前半との差はわずか0.4秒しかない。

これは前半で作ったスピードを最後までほぼ維持したことを意味する。

短距離戦では、多くの馬がラストで苦しくなる。

特に逃げ馬であれば、その傾向はさらに顕著だ。

それにもかかわらず、この馬は最後まで脚勢が鈍らなかった。

ラップだけを見ると、未勝利戦とは思えないほど完成度の高い内容だった。

能力だけでなく、レースセンスや持続力の高さも感じさせる一戦だったと言える。


過去10年でも該当馬はわずか2頭

今回の走りをさらに裏付けるデータがある。

過去10年間、7月の函館芝1200メートルにおいて、

・勝ち時計1分08秒6以内
・ラスト4ハロン45秒6以内

この2つを同時に満たした3歳馬を調べると、該当馬はわずか2頭しか存在しない。

その名はダノンスマッシュ。

そしてデアレガーロ。

どちらも後に重賞戦線で活躍した実力馬である。

今回、ホウオウザロイヤルはその希少なデータに新たな名前を刻んだ。

もちろん、データだけで将来が保証されるわけではない。

しかし、過去の活躍馬と同じ水準のパフォーマンスを見せたことは、決して偶然とは言えないだろう。

能力の高さを示す一つの指標として、非常に価値のあるデータである。


血統的にもまだ伸びる可能性

血統面から見ても楽しみは大きい。

父はドレフォン。

芝・ダートを問わずスピード能力を産駒へ伝える種牡馬として知られ、多くの活躍馬を送り出している。

さらに母系はブラックエンブレム一族。

この牝系は古馬になってから能力を開花させる馬も多く、成長力にも定評がある。

ホウオウザロイヤル自身も、デビューが3歳7月だったことを考えれば、まだ完成された状態ではない可能性が高い。

むしろ今回の走りは、伸びしろを残した段階でのパフォーマンスだったとも考えられる。

もし心身ともにさらに成長してくれば、今回以上の競馬を見せても何ら不思議ではない。

血統背景を見ても、今後の飛躍を十分期待できる一頭と言えるだろう。


未来のスプリント戦線を担う存在になれるか

今回のレースを振り返ると、

・開催最終週で記録した優秀な勝ち時計
・前後半のバランスが極めて優秀なラップ
・4馬身差という着差以上に強い内容
・過去10年でもわずか2頭しかいないデータへの到達
・将来性を感じさせる良血背景

これだけの材料が揃えば、「怪物候補」と呼ぶ価値は十分にある。

もちろん、まだ未勝利を勝ち上がったばかりであり、今後は1勝クラス、オープン、そして重賞と相手は一気に強くなる。

真価が問われるのはこれからだ。

しかし、未来の活躍馬には必ずと言っていいほど、「このレースから違っていた」と語られる一戦が存在する。

ホウオウザロイヤルにとって、この函館4Rがその一戦になる可能性は十分ある。

重賞が行われなかった静かな土曜日。

その裏側で、一頭の若駒は誰にも派手に注目されることなく、自らの才能を静かに証明していた。

次走では、もう「未勝利馬」という肩書きではない。

この一戦が本物だったのか。

それとも歴史に残る飛躍の序章だったのか。

その答えは、これから始まるホウオウザロイヤルの歩みが教えてくれるだろう。

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