いよいよ今週に開催される、日本競馬最大の祭典――日本ダービー。
皐月賞、青葉賞、プリンシパルステークス。
春の東京・中山を舞台に、数々の若駒たちが激闘を繰り広げてきた。
そしてその戦いも、いよいよクライマックスを迎える。
競馬関係者、ファン、騎手、調教師。
全てのホースマンが憧れる舞台。
それが東京優駿、日本ダービーである。
しかしこのレースには、長年語り継がれてきた“あるジンクス”が存在する。
――青葉賞の勝ち馬は、日本ダービーを勝てない。
競馬ファンであれば、一度は耳にしたことがあるだろう。
青葉賞は1994年に創設。
日本ダービーへの重要な前哨戦として位置づけられ、多くの実力馬たちがここを経由して本番へ向かってきた。
ウインバリアシオン。
アドミラブル。
オーソリティ。
ワンダフルタウン。
スキルヴィング。
数々の実力馬が青葉賞を制し、ダービーへ挑戦した。
しかし、どれほど強い競馬を見せても、あと一歩届かなかった。
これまで32年間。
青葉賞勝ち馬から、日本ダービー馬は誕生していない。
しかも連対ですら、2012年フェノーメノの2着まで遡る。
つまり14年以上、青葉賞組はダービーで結果を残せていないのである。
なぜ青葉賞組は勝てないのか。
理由としてよく挙げられるのが、ローテーションの過酷さだ。
青葉賞はダービーのわずか4週間前。
東京2400mという極限の舞台を走った後、再び東京2400mで最高峰の戦いに挑まなければならない。
3歳春の若駒にとって、この負荷は極めて大きい。
皐月賞組のように中山2000mから直行する組と比較すると、消耗度の差は歴然。
どれほど能力が高くとも、本番でわずかにパフォーマンスを落としてしまう。
それが「青葉賞の呪い」と呼ばれる理由だった。
しかし今年。
その歴史が、遂に動くかもしれない。
想定3番人気。
青葉賞馬、ゴーイントゥスカイ。

今年の青葉賞。
そのレース内容は、まさに衝撃だった。
スタート後、外枠から無理をせず中団外目へ。
折り合いも完璧。
若駒らしい力みは一切見られず、非常にスムーズな競馬を進めていく。
東京2400mという舞台では、能力だけでは勝てない。
折り合い、リズム、脚の使いどころ。
その全てが問われる。
しかしゴーイントゥスカイは、それらを高次元でクリアしていた。
そして迎えた直線。
馬群の間から進路を見つけると、そこから一気に加速。
他馬とは明らかに違う脚色だった。
前で粘るタイダルロックを猛追。
並びかける間もなく差し切り、最後は力強く突き抜けた。
その瞬間、多くの競馬ファンが感じたはずだ。
「これはただの青葉賞馬ではない」と。

勝ち時計は2分23秒0。
これは青葉賞史上、過去最速タイム。
しかも注目すべきはラストのラップである。
最後の4ハロンは46秒3。
過去10年の東京2400mで、この数字に並ぶパフォーマンスを記録した3歳馬はわずかしか存在しない。
アーモンドアイ。
シャフリヤール。
オーソリティ。
いずれも歴代トップクラスの能力を持った名馬たちである。
さらに驚異的なのが、ラスト2ハロン。
11秒3。
そしてラスト1ハロンは11秒2。
2400mという長距離戦。
しかも青葉賞という消耗戦の中で、最後に加速しているのである。
普通であれば、最後は減速ラップになる。
スタミナを消耗し切った3歳馬たちが、苦しみながらゴールへ向かう。
それが2400m戦の一般的な姿だ。
しかしゴーイントゥスカイは違った。
最後まで脚色が衰えない。
むしろ、さらに加速していた。
これは着差以上に強い内容だったと言える。
そして何より、この馬には“ダービー向き”の雰囲気がある。
東京2400mという舞台は、単なるスタミナ戦ではない。
瞬発力。
折り合い。
トップスピードの持続。
さらに東京の長い直線を耐え抜く精神力。
全てが揃わなければ勝てない。
その意味で、ゴーイントゥスカイの走りは非常に完成度が高かった。
さらに今年は、これまでの青葉賞組とは違う点がある。
昨年から、青葉賞の日程が1週前倒しされた。
従来よりも本番までの間隔に余裕が生まれ、ローテーション面の不利が軽減されたのである。
昨年の青葉賞馬エネルジコはダービーを回避。
つまり新日程となってから、ゴーイントゥスカイが初めての挑戦者となる。
これは非常に重要なポイントだ。
これまでの「青葉賞組は勝てない」というデータ。
その多くは旧日程で積み重ねられたもの。
つまり今年は、“新しい青葉賞”としての初年度とも言える。
過去の常識が、そのまま通用するとは限らない。
そして、この挑戦をさらに特別なものにしている存在がいる。
鞍上、武豊。

日本競馬界のレジェンド。
日本ダービー最多勝利記録保持者。
スペシャルウィーク。
ディープインパクト。
キズナ。
ドウデュース。
数々の名馬と共に、日本ダービーの歴史を彩ってきた男である。
その武豊が、再び歴史に挑む。
若駒を導き、最高峰の舞台へ送り届ける技術。
プレッシャーのかかる大舞台で冷静に乗る精神力。
そして東京2400mを知り尽くした経験。
ダービーにおいて、これほど心強い存在はいない。
近年の競馬界では、数々の歴史が動いている。
かつて不可能と言われたこと。
絶対に破れないと言われた壁。
その常識が、次々と覆されてきた。
先週のオークスでは、女性騎手がGI制覇という偉業を達成した。
競馬界は今、確実に新しい時代へ進み始めている。
ならば――。
青葉賞馬がダービーを勝てない。
その歴史も、変わる時が来ているのかもしれない。
もちろん、日本ダービーは甘くない。
皐月賞組。
別路線組。
各路線を勝ち上がってきた怪物候補たちが集結する。
わずかな不利。
わずかな仕掛けの差。
それだけで結果が大きく変わる。
だからこそ、日本ダービーは特別なのだ。
全てのホースマンが憧れ。
全ての競馬ファンが熱狂する。
3歳馬の頂点決戦。
その舞台で、もしゴーイントゥスカイが勝利したなら。
それは単なる一頭の勝利では終わらない。
32年間破れなかった“青葉賞の呪い”。
その歴史を塗り替える瞬間となる。
歴史は、いつだって破られるために存在する。
果たして今年。
ゴーイントゥスカイは、日本競馬の新たな歴史を刻むのか。
東京優駿、日本ダービー。
歴史の瞬間を、見逃すな。

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