
白毛というだけで人の心を奪う存在がいる。
だが、その馬は見た目だけではなかった。
白毛馬として史上初の重賞制覇。
そしてGIの舞台でも頂点へ。
牝馬クラシックに初めて挑み、初めて勝ち切るという離れ業をやってのけ、さらに2年連続で最優秀牝馬に選出された。
競馬史に名を刻むアイドルホース、ソダシ。
あの馬を愛したファンの数は計り知れない。
そして今――
その名牝と並び語られてもおかしくない数字を叩き出した一頭が、東京の芝に姿を現す。
日曜東京9レース。
雲雀ステークス。
主役候補は、ダノンセンチュリーだ。
■ 2億3000万円の期待

セレクトセールで約2億3000万円。
超高額で落札されたその瞬間から、この馬には“走って当然”という宿命が背負わされた。
高額馬というのは難しい。
勝てば「さすが」と言われ、負ければ「値段ほどではない」と言われる。
常に能力以上の評価とプレッシャーが付きまとう。
しかしダノンセンチュリーは、ここに来てその評価を実力でねじ伏せようとしている。
■ 前走2勝クラス ― 女王級のラップ

前走の2勝クラス。
道中はスムーズに2番手へ。
やや行きたがる面を見せながらも、鞍上はうまく折り合いに専念し、直線勝負へと持ち込んだ。
ペースは緩い。
前が止まりにくい流れ。
しかし直線に向いた瞬間、
後続との差はみるみる広がっていった。
まるで格が違うと言わんばかりに、
そのまま押し切っての完勝。
これで堂々の2連勝となった。
そして何より驚くべきは――
後半5ハロン57秒0。
速い。
相当速い。
過去10年、3歳の東京芝1600mで
この数字をクリアした馬は、あのソダシただ1頭。
偶然では片付けられない領域に、
ダノンセンチュリーは足を踏み入れた。
■ 前々走1勝クラス ― 絶望からの32秒7

だが、この馬の真価はむしろこちらかもしれない。
前々走の1勝クラス。
スタートでまさかの出遅れ。
ポジションを取れず、終始流れに乗れないままレースは進む。
4コーナーでは後ろから2番手。
普通なら、ここで万事休すだ。
だがそこからだった。
進路が開くや否や、
一瞬でトップスピードへ。
計測された上がり3ハロンは32秒7。
異次元の末脚で先行勢を一気に飲み込み、豪快に差し切った。
過去10年の東京芝1600mで
勝ち時計1分33秒1以内、上がり32秒7以内。
この厳しい条件を満たしたのは、
ダノンプレミアムを含む、わずか2頭しかいない。
つまりダノンセンチュリーは、
GI馬クラスの裏付けをすでに手にしているということになる。
■ 夏を越えて、覚醒
3歳馬にとって夏は魔法の季節だ。
馬体が増え、精神面が大人になり、走りの質が変わる。
ダノンセンチュリーも例外ではない。
むしろ、その変化は劇的と言っていい。
以前は気性面に幼さを見せ、
能力を出し切れない場面もあった。
だが近2走は違う。
折り合い、反応、加速、持続力。
すべてがワンランク上へ引き上げられている。
才能が、ようやく身体に追いついた。
そんな印象すら受ける。
■ 想定1番人気アンパドゥとの再戦

今回、想定1番人気に推されているのは
アンパドゥ。
実はダノンセンチュリーは3走前、この馬に敗れている。
しかしレース内容を振り返れば、
決して力負けではなかった。
直線で前が詰まり、追い出しが遅れた。
それでも上がりの時計はアンパドゥを上回っていた。
スムーズなら――
着順は入れ替わっていた可能性が高い。
ならば今回はどうか。
力をつけた今、
逆転の条件はそろったと見るのが自然だろう。
■ ここは通過点か、それとも証明の舞台か
もし今回、再びあのラップで勝つことができれば。
それはもう「条件戦レベル」ではない。
重賞戦線へ直行しても不思議ではない存在となる。
ソダシ級。
そう呼ばれるには結果が必要だ。
だが、そこへ手を伸ばせるだけの
数字と内容が揃っているのも事実。
この一戦は、未来のマイル王が生まれる瞬間になるかもしれない。
東京の長い直線。
そこで再び、衝撃のタイムは刻まれるのか。
雲雀ステークスは、
重賞に匹敵するほどの期待を抱かせる一戦となった。
ターフに現れる才能を、
我々は目撃する準備ができているだろうか。

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