ラヴェニュー、衝撃のデビュー戦
11月8日、東京競馬場。
午後の陽光がターフを照らし、静かな緊張がスタンドを包み込む。
この日の第5レース――2歳新馬戦に、のちに語り継がれるであろう“伝説の序章”が刻まれた。
栗東・友道康夫厩舎が送り出した新星、ラヴェニュー。
その名が、初陣で東京の空を震わせた。
静寂から始まる“予感”のスタート
ゲートが開く瞬間、空気が一変した。
ラヴェニューは完璧なスタートを切る。
軽快なフットワークで前へ出ると、無理なく好位につけた。
リズムは終始安定。
手綱を抑える鞍上の手には、ほとんど力が入っていない。
まるで馬自身がレースの展開を理解し、支配しているかのようだった。
4コーナーを迎える。
前方には、断然の1番人気――ミラージュノワール。
観客が息をのむその瞬間、ラヴェニューの闘志が燃え上がる。
外からスッと並びかけ、次の一瞬で並ぶ間もなく抜き去った。
その動きは、音もなく、だが決定的に速かった。
決戦 ― “才能”が爆ぜた瞬間
直線に入ると、二頭が並ぶ。
だが、ラヴェニューはそこから別次元の脚を見せた。
ギアをもう一段、上げるかのような加速。
半ばでミラージュノワールを完全に競り落とすと、
そこからは独走――。
ラスト1ハロンは11秒2。
ただの速さではない。
“加速しながらゴールする”という、トップホースにしか見られない動きだった。
その瞬間、東京の芝が光った。
観客席には驚きと歓声が混ざり、
スタンドにいた誰もが同じ言葉を思い浮かべた――
「これは、クロワデュノール級だ。」
いや、もしかすると――それを超えているのかもしれない。
数字が証明する“本物”
勝ち時計は1分46秒7。
それは、わずか半月前のアイビーステークス(2歳オープン)を上回る好タイムだった。
しかも、東京の新馬戦としては、
昨年6月の“クロワデュノール”に並ぶ最速タイム。
この数字がどれほど異常かは、過去の名馬の記録が物語る。
後半5ハロンのタイム――57秒6以内。
この領域に到達した馬は、近代日本競馬においてわずか3頭しかいない。
コントレイル。
イクイノックス。
クロワデュノール。
そして、4頭目として名を刻んだのが――
ラヴェニューである。
単なる“好時計”ではない。
この記録は、才能と適性、そして精神力のすべてが噛み合ったときにしか生まれない。
データが、彼の“本物”を証明していた。
加速の証明 ― クロワデュノール超えのラップ
ラヴェニューがさらに衝撃的だったのは、
ラスト2ハロンが11.3秒 – 11.2秒という“加速ラップ”を刻んだことだ。
普通、直線の坂を上る東京コースでは、最後の1ハロンで減速する。
だが彼は、そこをさらに加速している。
これは、あのクロワデュノールすら成し得なかった“異次元の伸び”だ。
“減速しない”という事実。
それは、ただ速い馬ではなく、**「頂点を狙う器」**であることの証。
その血を磨き上げたのは、言わずと知れた名伯楽――友道康夫調教師。
マカヒキ、ワグネリアン、ドウデュース。
数々のクラシックホースを手がけてきた彼が、
またしても「時代を動かす馬」を手にした。
血が導く宿命
ラヴェニューの血統もまた、非凡そのものだ。
半兄は、重賞2勝を挙げたギベオン。
1歳時にはセレクトセールで1億7,000万円の値をつけた“良血”でもある。
その血に流れるのは、力だけではない。
勝負を支配する知性、そして粘り強さ。
それがこの馬の走りに、確かな“宿命”として刻まれている。
レース後の彼の表情は穏やかだった。
燃え尽きるような激走のあとにも関わらず、どこか冷静で、落ち着いていた。
まるで自分の才能を理解しているかのように。
「勝つべくして勝った」――
そう言わざるを得ない完璧なデビューだった。
終章 ― 伝説の序章はここから始まる
東京の芝1800メートル。
多くの名馬が夢を追い、そして敗れていった舞台。
その場所に、新たな“鬼才”が名を刻んだ。
ラヴェニュー。
その名は、いずれクラシックの頂点――
ダービーの舞台で再び響くことになるだろう。
“加速の証明”。
この日の走りこそ、その第一章だった。
そして日本競馬は、またひとつ――
新たな伝説の目撃者となった。


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