3日間開催のラストに灯った“炎”
10月13日、京都競馬場。
3日間開催の最終日に行われた**6R・メイクデビュー京都(芝1600m)**で、ターフに新たな“炎”が灯った。
その名は――バルセシート。
管理するのは栗東・松下武士厩舎。
そして、この名前を聞いてピンときたファンも多いだろう。
彼は、2019年に阪神ジュベナイルフィリーズを制した名牝レシステンシアの全弟である。
姉のように、強烈なスピードと勝負根性を武器にした快速血統。
父モーリス、母マラコスタムブラダ。
力強さと瞬発力を兼ね備えた“世界級”の血の融合体――。
まさに、血統そのものがドラマを宿している。
出遅れから始まったデビュー戦
そして迎えたデビュー戦。
バルセシートは、15頭立ての中で静かにゲートへ向かった。
スタートの瞬間――わずかに立ち遅れた。
初陣特有の緊張感、まだ競馬というものを理解しきれていないような幼さ。
道中は中団よりやや後ろでの追走となった。
それでも、焦ることはない。
松下厩舎の管理馬らしく、落ち着いたフォームで脚を溜め、
3コーナー過ぎから少しずつエンジンがかかり始める。
そして、4コーナーを回った瞬間――。
その走りは一変した。
“炎の末脚”が炸裂した直線
直線で外へ持ち出すと、まるでスイッチが入ったかのような加速を見せた。
彼の中で、静かに燃えていた炎が一気に爆発する。
ラスト1ハロン、11.4秒。
それは“火のような末脚”だった。
他馬を一瞬で飲み込み、あっという間に先頭へ。
その勢いのままゴールを駆け抜けた瞬間、スタンドにはどよめきが広がった。
勝ち時計は1分33秒6。
ラップは4F 47.6 – 3F 35.4。
これは、単なる好時計ではない。
“本物の素質馬”が刻む、重賞級の数字だった。
歴代の名馬に並ぶ驚異のラップ
この「2歳・芝1600m で 1分33秒6、上がり1F 11.4以内」という数値。
実は、過去にこの領域へ到達した馬はごくわずかだ。
その名を挙げるなら――
- グランアレグリア(GⅠ6勝)
- チェルヴィニア(GⅠ2勝)
- アルマヴェローチェ(GⅠ1勝)
- ファンダム(GⅢ1勝)
- ゴンバデカーブース(GⅢ1勝)
そう、いずれも重賞級以上の才能を証明した馬たちばかりだ。
その中に、デビュー戦の段階で名を連ねたのがバルセシート。
しかもこの日の走りには、まだ“荒削りさ”が残っていた。
直線では進路を探す場面もありながら、それでも突き抜けた。
スムーズなら、さらに速い時計も出ていた可能性が高い。
つまり、このレース内容そのものが――将来性の塊だった。
キャロットファームが誇る“黄金世代”
そして、このバルセシートを送り出したのがキャロットファーム。
毎年のようにクラシック路線に有力馬を送り出す、国内屈指のクラブ馬主だ。
今季のキャロット勢を見渡せば、まさに“黄金世代”という言葉がふさわしい。
- クレパスキュラー:夏の札幌で2歳レコードを樹立。
- アランカール:野路菊ステークスで異次元の末脚を披露。
- グッドピース:阪神で圧巻の瞬発力を見せ、ファンを唸らせた。
そこに加わったのが、今回の主役・バルセシートだ。
これだけのラインナップが揃えば、来年のクラシック戦線を盛り上げることは間違いない。
それぞれが異なる個性を持ちながらも、共通するのは**“本物の才能”**。
キャロットファームが再び時代を動かす予感がする。
“伝説の血”が再び燃え上がる瞬間
姉・レシステンシアは、その生涯でターフを駆け抜けた稀代の快速牝馬だった。
彼女の走りには、観る者すべてを圧倒する強さと美しさがあった。
その血を受け継ぎ、弟が初陣で見せた“炎の末脚”。
それはまるで、姉の魂が再びターフに戻ってきたかのようだった。
もちろん、まだ1戦1勝。
キャリアは始まったばかりだ。
だが、このデビュー戦が持つインパクトは計り知れない。
彼が本気で走るようになったとき、どこまで行くのか――。
姉を超える存在へと進化する可能性を、誰も否定できないだろう。
終わりに ――“別次元の加速”を見た者たちへ
競馬の世界では、時折“瞬間”がすべてを変える。
スタートで立ち遅れても、
一瞬の閃光のような加速で歴史を塗り替える馬が現れる。
この日のバルセシートがまさにそれだった。
出遅れから一瞬で世界を変えた――。
その加速は、まさしく“別次元”。
まだ2歳。
だが、彼の中に燃える炎は確かに本物だ。
伝説の血を継ぐ新たなる“炎脚覚醒”。
その物語は、ここから始まったばかりだ。


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