■ 序章――不来方賞の舞台へ
9月2日、火曜日。
舞台は盛岡競馬場。岩手の地に刻まれてきた伝統の一戦――不来方賞（こずかたしょう）。
このレースは、ダート三冠の前哨戦として位置付けられる。
そして、その最終章には「ジャパンダートクラシック」が待ち受けている。
歴史を重ねてきた地方競馬の中でも、不来方賞は未来を占う重要な一戦だ。
その舞台に、いま一頭の“異能”が挑もうとしている。
その名は――ナルカミ。美浦・田中博康厩舎所属。
彼の存在は、ただの有力馬という枠には収まりきらない。
多くのファンや関係者が口にするのは、こうだ。
「ダートの歴史を、塗り替えるかもしれない馬」。
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■ 衝撃のデビュー――京都の疾走
ナルカミの物語は、昨年11月の京都から始まった。
デビュー戦。
スタート直後から先頭を奪い、そのまま一度も影を踏ませることなくゴールへ。
勝ち時計は 1分51秒2。
これは過去10年間の2歳新馬戦で最速。
しかも、コースレコードにわずか0.2秒と迫る驚異的な数字だった。
初陣から競馬ファンに衝撃を与えた走り。
それは、単なる素質馬の枠を超えた“異能”の誕生を告げる瞬間だった。
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■ 挫折――2戦目の敗北
しかし、栄光の道は決して平坦ではない。
続く2戦目。
ナルカミはハイペースで逃げ、直線に入る前に失速。大敗を喫した。
だが、その敗北は必ずしも「力不足」を意味するものではなかった。
多くの識者はこう分析する。
「鞍上のペース判断ミス。無謀な逃走でスタミナを消耗した結果」
つまり、馬の能力ではなく戦術の誤りだったのだ。
敗戦の中に、ナルカミの素質は確かに光り続けていた。
■ 立て直し――連勝街道へ
3戦目、そして4戦目。
ナルカミは見事に立て直し、再び連勝を飾る。
特に前走の福島・いわき特別は圧巻だった。
外枠から積極的に先手を奪い、昇級初戦ながらも主導権を掌握。
直線に入っても脚色は衰えず、2着に 5馬身差 をつけての逃走劇。
しかも勝ち時計は 1分44秒2。
これは翌日の3勝クラスをも上回るタイムであり、昇級戦とは思えぬ圧倒的パフォーマンスだった。
この勝利で、多くのファンが確信した。
――ナルカミはただの素質馬ではない。
「砂王鬼才」 の異名にふさわしい存在である、と。
■ 戦績と評価
ここまでの通算成績は 4戦3勝。
唯一の敗戦もペース配分の失敗に起因するもので、能力的な限界を示したものではない。
むしろ、それ以外のレースすべてで圧倒的なパフォーマンスを披露してきた。
デビュー戦は衝撃的な最速タイム。
そして福島での圧勝劇。
時計・内容の両面で他馬を凌駕してきた姿に、多くのファンが「歴史を変える存在」と感じ始めている。
■ 不来方賞――王者への挑戦
そして迎える、不来方賞。
このレースには、三冠王手がかかる“絶対王者”――ナチュラルライズが立ちはだかる。
地方と中央の期待馬がぶつかり合うことで、例年以上の注目が集まる。
ナチュラルライズはこれまで盤石の競馬を見せてきたが、
「その牙城を崩す可能性を秘めた存在」――それがナルカミだ。
血統か、実力か。
それとも運命のいたずらか。
勝負の行方は、誰にも予測できない。
■ 歴史を変える一戦へ
競馬の歴史を振り返れば、常に「異能」と呼ばれる馬が現れ、その時代を塗り替えてきた。
ナリタブライアン、シンボリルドルフ、そして近年のルヴァンスレーヴやチュウワウィザード。
彼らの共通点は、「ここぞ」という舞台で圧倒的な力を見せつけ、歴史に名を刻んだことだ。
ナルカミにその資質があるかどうか――答えは、不来方賞のゲートが開かれた瞬間にわかる。
■ 結び――未来を変えるのは誰か
9月2日、盛岡競馬場。
不来方賞。
デビュー戦で衝撃を与え、
福島で圧巻の走りを見せた馬、ナルカミ。
その名が盛岡の地で轟くとき――
ダート競馬の歴史は、新たな1ページを刻むことになるだろう。
未来を変える一戦が、今まさに始まろうとしている。
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