夏の札幌に現れた新星
8月、北海道シリーズの札幌競馬場。
芝1500メートルの新馬戦で、ひときわ強烈な存在感を放った一頭がいた。
その名は――グリオンヴール。

名前の由来は「快晴」を意味するアイルランド語。
その名の通り、どんよりとした夏空を突き抜ける光のような、鮮烈な走りを見せた。
血統が示す大物感
グリオンヴールは、血統的にも注目の存在である。

父は菊花賞を制し、産駒にデアリングタクトやエフフォーリアを送り出している エピファネイア。
母はアイルランド産馬で、母系をたどれば欧州の名血が流れる。
さらに伯父にはイギリスでG1を2勝した テンソヴリンズ が名を連ねており、世界的な血脈を背景に持っている。
美浦の宮田敬介厩舎から送り出され、鞍上は名手クリストフ・ルメール。
その組み合わせだけでも大きな注目を集めたが、デビュー戦は期待を超えるインパクトを残すこととなった。

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スタートは出遅れ
レースは札幌芝1500メートル、稍重の馬場で行われた。
ゲートが開くと、グリオンヴールはややアオり気味に出て、後方5番手からの追走を強いられた。
新馬戦としては致命的とも言える出遅れ。
普通ならこの時点で勝ち負けは難しい状況だった。
それでも、鞍上ルメールは慌てなかった。
馬なりのまま、外を回りながらスムーズにポジションを上げていく。
余裕すら感じさせる走りだった。
3コーナーからの進出
3コーナーを過ぎたあたりで、外から併せ馬が迫る。
グリオンヴールは若干行きたがる素振りを見せ、決してスムーズな競馬とは言えなかった。
しかも大外を回るロスも抱えていた。
それでも、4コーナーを回った瞬間に前を捉えると、勢いそのままに直線へ。
圧巻の直線
直線に入ると、ルメールの手はほとんど動かない。
軽く促しただけで、グリオンヴールは弾けるように加速した。
鞭を一切使わず――ノーステッキ。
馬自身の力だけで後続を置き去りにする。
最後は、なんと 7馬身差。
観客がどよめくほどの圧勝劇だった。

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数字が裏付ける衝撃
勝ち時計は 1分30秒6。
新馬戦の札幌芝1500メートル、稍重の条件で過去10年の歴代2位という好タイムだ。
出遅れ、大外を回るロス、そして折り合いに苦労する場面。
決して完璧な内容ではなかった。
それでも余力を残しながら、他馬を圧倒したのだから、その能力の高さは疑いようがない。

ルメールの評価
レース後、鞍上ルメールはこう語った。
「まだ子供。これから良くなっていく。」
一見すると辛口な評価にも聞こえる。
だがその言葉の裏には、確かな手応えが隠されていた。
「まだ成長の余地がある」ということは、裏を返せば 伸びしろが計り知れない ということだ。

適性と将来展望
血統背景、そして走りから見て、距離はマイル前後がベストと考えられる。
直線の長い東京や新潟のコースでも、その切れ味をいかんなく発揮できるだろう。
芝1800メートル以上でも対応可能だが、現時点ではスピードを活かせるマイル戦でこそ真価を発揮できそうだ。
この走りなら、いずれ クラシック戦線 への参戦も現実味を帯びてくる。
“快晴”の名にふさわしい存在
グリオンヴールという名前は「快晴」の意。
その名の通り、暗雲を切り裂き晴れ渡る空のように、札幌の芝コースを一気に照らした。
直線だけで7馬身差という圧勝。
それは単なる新馬勝ちではなく、未来を大きく照らす一条の光だった。
まだ幼さを残しながらも、確かなポテンシャルを感じさせる走り。
その姿は、これからの競馬界に新たな物語を紡ぐ存在となる可能性を秘めている。

結論――新たな物語の序章
直線だけで7馬身差。
しかもノーステッキでの圧勝。
決して完璧ではないレース内容で、ここまでの結果を残したのだから驚きだ。
この日の札幌で、観客は一頭の未来を担う存在を目撃した。
――グリオンヴール。
その名は、快晴の空のように明るく鮮烈に、競馬界に差し込んだ新しい光だ。
これからの成長と飛躍に、大きな期待を寄せずにはいられない。
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