新潟のターフに現れた新星
夏競馬も佳境を迎える8月の新潟。
メインレースでは未来のマイル王を占う新潟2歳ステークスが行われた同日、その前座にあたる一戦で、観客の度肝を抜く走りを見せた牝馬がいた。
その名は――ルージュダリア。

血統が語る名門の系譜
ルージュダリアの血統は、デビュー前から注目されるに値するものだった。

父はリオンディーズ。キャリアは僅か5戦のみだが、種牡馬としても瞬発力に富む産駒を数多く送り出している。
さらに、叔母には宝塚記念・有馬記念を制した名牝リスグラシュー。
国内外で輝かしい戦績を残した“最強牝馬”の血を色濃く受け継ぐ存在である。

馬主は東京ホースレーシング。
短距離戦線を賑わせたレッドファルクス、ダートG1馬レッドルゼルといった名馬を所有してきた実績豊富なオーナーである。
そして管理するのは美浦・林徹厩舎。近年は重賞戦線でも存在感を示す勢いある厩舎から送り出された、新たな刺客だ。
デビュー戦の舞台は新潟芝1600メートル
ルージュダリアがデビュー戦を迎えたのは 8月24日、新潟6R・2歳新馬戦(芝1600m)。
この舞台は新潟2歳ステークスと同じ条件であり、多くの名馬がここから羽ばたいてきた。
だが、内側の馬場は連日の開催で荒れ気味。
さらに、新潟マイルは直線が長いため差し馬有利とされ、逃げ馬には圧倒的に不利な条件だった。
しかし、そのセオリーを打ち破る走りを、ルージュダリアは見せつける。
スタートから主導権を奪う
ゲートが開くと、ルージュダリアは鋭いスタートを決める。
難なく先頭に立つと、淡々としたペースで後続を引っ張り、自らのリズムでレースを支配していった。
「直線で差されるだろう」
多くの観客はそう予想した。
なにしろ舞台は新潟の長い直線。逃げ馬にとっては過酷な条件だ。
だが直線に入ると、その予想を嘲笑うかのようにルージュダリアは加速する。

圧巻の独走
並びかけるどころか、後続との差をさらに広げていく。
新潟の長い直線で差し馬たちが猛追するはずの舞台で、彼女は独走状態に突入。
結局、その差は 5馬身。
まさに圧巻の逃げ切り勝ちだった。
勝ち時計とラップが示す衝撃
勝ち時計は 1分34秒9。
これは前日の同条件の新馬戦と比較して、実に3秒も速いタイムだった。
ラップを振り返ると、
11.4 ― 11.0 ― 11.7
最後まで大きな減速はなく、スピードを落とさず伸び切っている。
さらに上がり4ハロン46秒5、3ハロン34秒1という数字は、同じ舞台でデビューした過去の名馬たちを凌ぐレベル。
この結果だけでも、ルージュダリアがただの一勝馬ではないことを証明している。

名馬たちとの比較
過去、この新潟芝1600メートルの舞台からは数々の名馬が羽ばたいてきた。
たとえば重賞5勝を挙げたスプリンター トウシンマカオ。
新馬戦での上がりは4F47.6 ― 3F34.8。

さらに牝馬重賞を制した スマイルカナ。
彼女の新馬戦ラップは4F47.6 ― 3F35.0。

いずれも後に重賞戦線で活躍した実力馬だが、ルージュダリアのラップはその数字を大きく上回っていた。
比較してみると、その潜在能力の高さが一層際立つ。
血統と適性が示す未来
リスグラシューの血を引く良血馬が、新潟のマイルで逃げ切りを演じたことは象徴的だ。
折り合い面を考慮すると距離は1600メートルがベストと見られ、これはすなわち来年の 桜花賞 に直結する資質を持つということ。
逃げ馬が不利とされる条件を跳ね返し、歴代の名馬たちを上回る時計で勝利。
その走りは「疾風先駆」の異名がふさわしいものだった。

結論――疾風の如き新星
デビュー戦でこれほどのインパクトを残す牝馬はそう多くはない。
ルージュダリアが新潟のマイルで見せた逃げ切り勝ちは、まさに 衝撃の新星誕生 と呼ぶにふさわしい内容だった。
疾風の如く駆け抜けたその走りは、来春の牝馬クラシックを展望させるに十分なインパクトを残した。
――ルージュダリア。
その名を、今後の競馬史に刻む可能性を秘めた一頭を、我々は目撃したのかもしれない。
次走、さらなる進化を遂げた姿をファンに見せてくれることだろう。

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